総合職という草野球選手

ローテーションという旧態依然とした人事異動が呼び名は変わっても今でも続いているのではないかと不安になる。人事評価を見ても、多くの評価項目で満遍なく点を稼いだものが高い評価を受けるシステムがまだ生きているのではないか?レーダーチャートで表すと丸に近く、実にバランスの取れた有能な社員に見える。
車の例がいいかどうか分からないが、車に例えれば、バランスのとれた社員は、突出した能力もない代わりに、極端な問題点もない安心して乗れるファミリーカーだ。しかし、F1にでて勝負になるような車でないことも確かだ。F1は極端に言えば、高速性能の勝負の世界だ。レーダーチャートで表せば、ある必要な点だけが突出していて、レーダーチャートの最高点(例えば10点)をはるかに越え、スケールオーバーしている。その他の点ではゼロではないにしても、何点でもかまわない。レーダーチャートは極端に歪んだ形になる。
プロの世界では、その突出した点でプロとして能力を問われ、発揮することが要求される。 高校野球程度までなら、ピッチャーで四番バッターもあるだろう。町内野球なら、どのポジションでもこなすオールラウンドプレーヤがいるだろう。 しかし、プロ野球ではありえない。プロ野球の選手のレーダーチャートを描いたら、突出した点と落ちている点がはっきりでて、歪んだ形になるだろう。プロの世界とはそこまで特化して能力を磨き上げなければ戦えない世界だ。
ここでビジネスの世界を見てみると、ビジネス戦士などともてはやされているものの、プロとして通用する人材がどれほどいるのか?レーダーチャートの個々のそれぞれの必要な点でスケールオーバーしている人材を集めて初めて、総合力でスケールオーバーしているプロの集団を組織、構成できる。いくらバランスのいい人材をいくら集めたところで、スケール内のちんまりとした能力の組織しかできない。 世界のビジネスでは、その道のプロがプロとしての能力を競い合う戦場のような世界で、バランスのよさでは勝ち目はないと考えた方がいい。
経験と学習でプロの域にまで成長しうるかもしれない人材をローテーションという人事異動で凡庸な(言い過ぎかもしれないが)人材に育成をするのはやめにした方がいい。プロ野球じゃなくて、ましてメジャーリーグなんて目指すことなく、町内野球をし続けるつもりなら話しは別だが。
部下にお前は何のプロだと聞いてみるのもいいし、自分自身に問いただしてみるのもいいだろう。間違ってもサラリーマンのプロですなんて答えはないだろうが。