説明できるか?

ちょっと前に相対性理論から量子力学と線理論への物理学の進歩を分かりやすく紹介した本を読んでいて、はたと気がついた。物理学は、要は自然界の事象をできれば簡潔な数式で説明する、しようとしている学問じゃないか。極論かもしれないが間違っていないと思う。そう思ったら、経済学は社会を経済の視点から説明しようとする学問なのかと。見る角度によってマルクス経済学になったり、ケインズ経済学になるのかと思っている。乱暴な理解だが、概ねこう考えて間違いじゃないと思っている。当たり前の話しじゃないかと言われればいいのだが。
こう考えると、市場調査、営業現場にも同じようなことが言えるのではないかと思えてならない。対象の特性を理解し説明できれば、制御できる可能性がある。入力をこう変えれば、出力がこう変るはずだという考えがなりたつ。ただ、市場は複雑な対象なので、自社のポジションからでは見えない、直接伺いしることのできない面も多い。自社のポジションを右に左に振ったところで、振れる範囲が限られているし、対象が複雑すぎて、特性を完璧に調べる試みは現実的でない。
現実的な方法として、自社以外の市場のプレーヤ(同業他社や関連業界他社など)のポジションからみた市場の特性を、少なくとも彼らが市場をどう見て、どう理解しているのかを彼らの営業活動などから説明してみれば、市場の別の側面、特性を間接的に理解できるのではないかと考えている。ブラックホールの発見と似たような感じだ。ある星の軌道が計算した軌道と合わない。観測に基づく軌道を説明するには、どうしても観測では見つからないが、xxxの重力場を星にあたえるものがyyyあたりになければつじつまが合わない。しかし、yyyあたりには何もみつからない。ここからブラックホールがyyyにあるはずだという仮設がでてくる。
仮説が情況を説明できるのであれば、営業現場ではその仮説を仮に真と考え、仮説がどこまで現実にあっているかを検証しながら営業展開を進めればいい。競合の市場理解、販売政策は、彼らのポジションから見た市場の映像だと言える。競合各社も思い入れ、行き掛かりなどのバイアスがあるので、映し出された映像には歪みもあるし、ノイズも乗っているだろう。しかし、彼らの営業活動を理解し、なぜそのような販売政策をとっているのか説明できれば、彼らが見ている市場の景色(特性)を間接的に知りうる。
自社のポジションからの市場理解と競合各社の販売政策から彼らのポジションから見た市場特性を組み合わせれば市場を多面的に理解できる。多面的に見れれば、それだけ市場に合った、競合を凌駕する販売政策の立案、遂行が可能になる。
自社の販売政策を検討、策定する際に市場のメインプレーヤの販売政策から彼らの市場理解を説明する試みはする価値のあることだと思う。たとえ完璧でなくても、おおまか説明できれば、自社中心の独りよがりの結論をさけることも可能になる。下手な後知恵の集約のようなビジネス本からたいして利きもしない万能薬を拾い出すようなやりかたや、一般論しか語れないコンサルの話を参考にするより、よほど実践的なアプローチだと思うのだが。