はちゃめちゃホームページ

協業関係にある会社のホームページにこちらの製品を掲載するという。掲載に必要な資料は提供したが、はたしてどのようなかたちで掲載するのか気になって、先方のホームページを見てみた。今まで、ホームページ?、ありますと言うだけの、あってもなくてもいい無口なホームページは随分見てきた。今回のものはちょっと違ってた、という以上にたまげた。
ただただ口数は多い。饒舌かと聞かれれば、そうかもしれない。稚拙な作業で頻繁にアップデートはしているようだが、巷で言う説得力(定義の分からない言葉だが)と言われるようなものはない。何を訴えたいのは読み解していってもなかなか判然としない。それもそのはず、長年やってきた本業と本業とは全く関係のない複数の新規事業?関係のページが渾然一体になっている。渾然一体といえば、混沌としたなかにも、なにか熟考の上に構築された有機的に結合された組織体が、時間の経過とともに実体として姿を現すようなものを思い浮かべるが、そのようなものは全くない。事業をどう進めてゆこうと考えといるようには見えない。一言で言えば、ただのごちゃごちゃしたスラム化したホームページ。
そのさまは、まるで田舎の建て増しを繰り返してきた大きさだけは大きい傷んだ旅館に似たところがある。その都度ごとに合理的に考えての建て増しだったのだろうが、都度つどの間を貫くヴィジョンがない。少なくとも長期的な視点という意味では、無計画な増築を重ねた結果、お互いに同じ旅館の一部とは思えないバラバラな建物群とそれを結ぶ迷路のような通廊が出来上がる。建て増しし続けた旅館とホームページ、変な比喩だが、似たところがある。
旅館の場合は、ホームページよりまだ救いがあるというか、制限が働く。増築にしろ、改築にしろ、今朝思いついて、明日実行という訳には行かない。何しろ相手は建物、いかに稚拙であったとしても計画があるし設計もある、遵法の規制も働く。ところが、ホームページの改版は良くも悪くも軽く、安易だ。レイアウトの大きな変更や、HTLMではない環境のところで何か新しいものを持ち込んだり、大きく変更でもしない限り大した手間はかからない。このかからない容易さが曲者で、旅館の建て増し以上に混乱した、コンセプトや基本設計のない、建て増しの繰り返しで出来上がったとしか思えない、定見のないだらしのないホームページを生み出してきた。
ホームページの改版の実作業の容易さが禍して、多くの人達がコンセプトや基本設計なしで使えるホームページができるものと誤解してきた。誤解してきたというのは、ことの一面ででしか正しくない。多くの場合、誤解というより、まして考え方の違いではあり得えず、認識の欠如と言った方が正しい。市場における自社の事業のありかた=自己定義にまで踏み込んで考えたことのない経営者が、ホームページ作成の目的や、その目的を必然として規定する企業としてのあり方や戦略などを明示しえないことから、あるというだけの、かたちだけのホームページが作られてきた。そして、かたちだけが無定見なアップデートによってスラム化してきた。
田舎の温泉旅館の主で、無定見な建て増しをしてきたのと似たよう人物が社長だったらどのようなホームページが作られ、どのようなアップデートがなされるか?もし、社長たる人が、田舎町の商店主(失礼)をひっくり返したような知識と能力と見識の人で、口語でも何を言わんとしているのか分からないことしか話せなかったら、また、フツーのレベルの業務書類を書く能力もなかったら、どのようなホームページになるか想像がつくだろう。企業として存在、その存在を公言する基本理念や事業目的を明確にしたホームページの基本設計などあろうはずもない。そのようなものがある事自体知らないだろう。
社内にホームページを作成し得る技能を持った人がいればその人に、いなければホームページ制作外注業者に社長の思いつき−基本理念も基本コンセプトも基本設計もない−が言い渡される。思いつきの改版が言い渡される。貰ったほうも、建て増し大工よろしく、釘とのこぎりのやっつけ仕事をし続ける。最初からスラム化しそうなバラックだったもののスラム化なので、関係者はそれがスラムと感じることもない。感じるために必要な感性まで鈍化し、スラムが当たり前になる。
どこでどのように聞いてきたのか知る由もないが、SEO対策と称して、故意にホームページ上に掲載している名称や仕様の統一をはからずに、考えられるありとあらゆる言い方で記述してあるとのこと。度重なるアップデートでホームページの当初の構成が瓦解し、ページレイアウトも雑な建て増し工事の跡が生々しい。そこに故意に持ち込まれた用語や名称の不統一。はじめから安普請のバラックのようなホームページが完璧にスラムになっている。多少でも常識を持ちあわせている人なら足を踏み入れようとしない。夜郎自大のちゃちなプライドを傷つけないよう注意しながら、ホームページについて遠回しのアドバイスしたら、スラムを当たり前と思う以上に、よくできていると胸を張っているとしかとれない返事が返ってきた。呆れて敬遠する以外に何か出来る可能性はあるか?何度も自問してみたが何も思い浮かばない。ご自慢のスラムが崩壊するのは構わないが、巻き添えをくって怪我でもしたら目も当てられない。できることは敬遠することだけだった。
2013/5/26