思いつきに法螺話

いくつかの会社でエライさんの思いつきに振り回された。中には世間話とも冗談ともつかない、言っているご本人にしてもさしたる思いがあってのことでないことがある。ただの駄話で音としての話が消えれば、そのまま消えて誰も記憶に留めようとはしない。いつもそうであれば、一時の気分転換くらいにはなって害がないのだが、ときにはなぜか成り立ちようのない考えを命令として押し付けてくるから困る。
それが雲を掴むような話しなら、どうしたところで掴めない雲として、実行し得ない絵物語の戦略をさっさと書き上げて、もっともらしくお話させて頂いてそのままお蔵入りで終わりなのだが、あまりに簡単にお蔵入りのストーリーを持って来られたのが面白くないのだろう。自分の威厳を示すためとか思えない妙な固執というのか往生際が悪いというのか、お蔵入りできないストーリーを持って来いと言い出す。お蔵入りすべきストーリーを編集して、味付けをちょっと変えてしぶしぶでも納得してお蔵入りしてくれればいいのだが、しばしば固執の種類というのかレベルが違ってそう簡単にはゆきそうもない雰囲気のときがある。
決めるまでに散々弄り回されたが、それでも遂行可能な、遂行する価値のある戦略。遂行している戦略が紆余曲折はあるもののそこそこまともに進んでいる時に限って余計なことを言い出す。思いつき、どう考えても自分の存在を誇示せんがための命令ででしかないから余計な時間を割きたくない。
戦略を立案したのはこっちだが、それを了承したのは他でもないエライさん。自分で納得して遂行させておいて、何とかなりそう以上に上手くゆきそうだとそれを頓挫させかねないことを言い出す。頓挫させれば、始めた時より状況は悪化する。途中で放り投げたら、放り投げたものを拾い集めて整理して一からマイナス地点からの再スタートになる。そうしたいのは個人の勝手だが、それでは組織も人ももたない。それこそ昔のように勝手にしろとケツをまくりかねない“サムライ”はいなくなったが人は去ってゆく。
なんとかやってきて、先が見えてきたところで頓挫させるわけにゆかないから、お蔵入りのストーリーとは違った別のお蔵入りのストーリー、ときにはストーリーはいいのだが、実施するにはコストも時間もかかりすぎてさしものエライさんも手を出しきれない大風呂敷のストーリーを書き上げる。自分を優秀だと思っている、あるいは思い込んでいる類に人たちにはいいおもちゃになる。仕掛けは大きいし、その種類も使いどきも色々考えられるから、ああでもない、こうでもないと頭の中で弄り回せる。ただ、弄り回したところでフツー何も起きようがない。夜郎自大向け法螺話、フツーならお蔵入にもいれてもらえない類の話。そんな話を持ってきたものは叱責されるはずなのだが、偉く振舞っていたい、いられれば幸せな人たちには想像以上に受ける。
法螺話、全てが架空というわけにはゆかない。実在の人たちの配役をきちんと決めて、その人たちがキーマンとなって創りあげる新しい組織形態から次の、またその先の事業展開までの絵が真実味をもって描かれている。業界の上も下も表も裏もかなり精通しているから描けるストーリー、ただ大河ドラマ程度の知識と考えのある人なら、どんなことがあってもやろうなどとは思わない。
あまりに社長がああだの、こうだの煩いので大河ドラマの類をケース別に法螺話をいくつか書き上げておもちゃにさせておいた。請け負った仕事も終わって次の仕事で奔走していたら、血迷った社長がいくつかのストーリーをごちゃまぜにして御自身のオリジナルストーリーを書き上げてめちゃくちゃな事業展開を始めているとの噂が聞こえてきた。
何を言ったところで、まっとうなことを理解出来るような人ではない。宗教じみた信念とでもいうのか自分が社が置かれた市場の状況も自分と社の実力もなにも関係ない。夢といえば聞こえがいいが、ほとんど妄想とでも言うしかないものを追い求めて支離滅裂。動ける人材はあきれて社を去る。去れない人たちが社長の妄想のお付き合い。
落ちるところは、下手な茶坊主しかできない大根役者に囲まれて絵に描いたような“裸の王様”。茶坊主ども、お蔵入りしかない法螺話を書く能力もなく、手を付けられる三文オペラを書いちゃうから始末が悪い。
エライさんのどうでもいい思いつき、法螺話で終わらせるくらいの能がなければ、。。。
2014/6/1