原子力も天然ガスもグリーン?(改版)

Die Weltの二月二日付け記事「European Commission declares nuclear and gas to be green」をみたとき、さすがにそれはないだろうと目を疑った。見出しを直訳すれば、「欧州委員会が原子力発電と天然ガスはグリーンだと宣言した」になる。

記事のurlは次の通り。
https://www.dw.com/en/european-commission-declares-nuclear-and-gas-to-be-green/a-60614990?maca=en-newsletter_en_bulletin-2097-xml-newsletter&r=17278041521318988&lid=2045288&pm_ln=132341

政治家やマスコミが都合のいいように言葉を使うから、元々はしっかり定義されていた言葉ですら、何を言っているのかわからなくなることがある。節操のない政治屋の発言を聞くたびに、融通無碍な日本語のせいもあってのことだろうと思っていた。ところがこの記事を見ると、世界中どこも似たようなもので、言葉にうるさいはずのヨーロッパでもこんなものだったのかとがっかりする。

Die Weltの記事の表題にある「nuclear and gas to be green」のgreenは緑ではない。マスコミにさらされている人ならだれでも、このgreenはエネルギーに関する言葉で、自然(環境)に優しいという意味だろうと想像がつく。
ためしにグリーンエネルギーと入力して検索したら。次の説明ができた。
「グリーンエネルギー(グリーン電力)とは、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスなどから作られるエネルギー(電気)のことです。 これらの資源は枯渇しないため再利用が可能であり、地球温暖化の原因となるCO2の排出や廃棄物が少ないことから、環境への負担が少ないという特徴があります」
ところが、green energyで検索すると、下記のように天然ガスまで含まれているものがでてきた。
「発電に際し、二酸化炭素などの物質を排出しない、または極めて排出が少なく環境負荷が小さいエネルギーの総称。水力、太陽光、風力、地熱、天然ガスなどを指す」
二酸化炭素などの排出が極めて少ないとうことで天然ガスがgreenなら、核廃棄物の処理の目途がたたない原子力だってgreenじゃないかと、あちこちでグリーンが拡大解釈される。太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスなどから作られるエネルギーに限定しなければ、環境保全という本質を忘れた議論になる。

地球温暖化や環境破壊が進んで待ったなしの状態になって、エネルギー源を化石燃料から再生可能エネルギーに置き換えなければと言われ出したと思ったら、あっという間に世界中のあちこちから20xx年までに二酸化炭素の排出量をゼロにするという宣言のような話しがでてきた。政治屋は人気取りと目先の利権目的で、そんな先のことなんか知ったこっちゃないと思っているだろうし、政商は金づるを掴んでおこうと、そして官僚は組織保全と身分保障をと考えてのことだろう。

どうやって達成するのかという具体的なプロセスやプロセスを構成する手段をもたない目標は絵に描いた餅以下の代物で、まともな社会をかたちづくる基本となる人々の信頼を損なう。そんな発言も政治後進国の日本でなら驚かないが、環境意識の高い、ヨーロッパですらこの体たらく。地球環境をどうのこうとのいうのは絵空事でしかないのかと心配になる。

電力の七十%を原子力に依存しているフランスが原発を廃棄するとも思えないし、どうやって世界中の石炭火力を天然ガスに切り換えるつもりなのか想像もつかない。太陽光発電や風力にバイオマスが、このさき二、三十年で原子力と化石燃料を置き換える目算があるわけでもない。
欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、「ヨーロッパが世界初の排出量ゼロの大陸になるために、いかなる努力も惜しまないことを厳粛に宣言している」と言っているらしいが、それを真に受ける(振りをする)のは余程のお人好しか、エネルギーか環境問題の利権で食ってる人たちだけだろう。
2022/2/13