黄色いアヒルは不敬罪(改版)

CNNが三月八日に伝えてきたニュースに呆れた。
「Yellow duck calendars land Thai man jail term for insulting monarchy」
表題を機械翻訳すると、「イエローダックカレンダー、王政を侮辱したタイ人男性に実刑判決」になる。
https://edition.cnn.com/2023/03/08/asia/rubber-duck-jail-scli-intl/index.html

黄色いアヒルのマンガが描いてあるカレダ―を売った人に懲役二年の判決が言い渡された。まさかと思うが本当の話で、ところは「微笑みの国」タイ。不敬罪のもとにされたアヒルにとってもいい迷惑だろう。
ニュースの写真で見る限り、アヒルのヒナを図案化したもので、可愛らしいのは可愛らしいが、そっけない図案にしかみえない。制作されたものをネットで販売したというだけで不敬罪。アヒルの図案で不敬罪じゃ不敬したくもなろうというものだろう。
黄色いアヒルを二〇二〇年の反王室、反体制運動のデモ隊が民主化運動のシンボルにつかったことかららしいが、日本じゃ黄色いアヒルのおもちゃは、ぐずる子供を風呂にいれるのに長年定番として使われてきた。それを知らずしてタイに駐在している家族が使っていたら、逮捕されるのか?たかが黄色いアヒルでなぜそれほど神経質になるのか?ならざるをえないのか?

随分前になるがタイでとんでもなくお世話になったことがあるだけに複雑な気持ちになる。ドイツの重電メーカの客を取りにでて、簡単に押し切られた。交渉とは相手を押し込むことだとしか考えられないアメリカの会社の強引な交渉にも微笑みをたやさない対応に教えられて帰ってきた。金儲けが透けて見える日本の「おもてなし」とは違う「微笑みの国」を実感したものだが、経済発展の末にあの「微笑み」が消えてしまったのか?
どうしたんだろうと考えていて、こういうことじゃないかと思いだした。街の人たちは「微笑み」に溢れているけど、政府や警察からは「微笑み」が消えたってことなのか、もしかしたら権力者やその手先の連中には端から「微笑み」なんかなかったのかもしれない。そうとでも考えなければ、起きていることを説明できない。

タイの不敬罪は世界で最も厳しい法律のひとつで、王室を侮辱したとみなされた場合、十五年もの懲役刑に処せられる。不敬罪で何百人もの人々が逮捕、投獄され、中には四十三年もの長い間投獄されている人もいるらしい。こんなことをしなければならない政府なんてのが大衆の支持を得られるはずがない。支持が得られないから強権政治にはしる。強権政治では大衆の支持を得られない。悪循環を断つ勇気と意思があるのは大衆だけで、大衆を恐れる強権政治を続けている人たちには、知恵もなければ勇気もない。あるのは既得権益だけだろう。国王や皇帝、天皇や貴族なんて種族はその典型だろう。

くまのプーさんに模せられることを嫌って、くまのプーさんを禁止にした国もあるし、時の首相がマリオに扮してオリンピックなんて国もある。大衆に信をおければ笑って済ませるだろうし、大衆から見下されていればいたで、恥ずかし笑いでごまかすこともできるじゃないかと思うが、どうだろう。
2023/4/18