安芸高田市のかわっちゃ困る人たち(改版)

税金を生活の糧としている人たちがいる。市の職員をはじめ公務員はみんなそうだし、議員も市長も俸給は税金で賄われている。その人たち以外にも、行政の外郭団体や委託先で働いている人たちもいれば、第三セクターという官民一体事業の役員や従業員もいる。たとえ間接的にしても、日本では誰もが生まれる前から、行政が提供する便宜を享受している。
日本が豊かになるにしたがって行政サービスも拡大してきた。市民サービスや福祉が充実して安全で住みやすい日本になって、誰もがそれが当たり前だと思っている。人口が増え、産業が発展して税金が増えていた時代ならいいが、少子高齢化が進んでいるところではその当たり前を見直さなければならなくなった。人口減少のいちじるしい地方では税収の落ち込みも激しく、経済成長期につくった道路や施設や組織を支えきれない。

この状態をとらえて少子高齢化を問題だという人たちがいるが、少子高齢化自体が問題なのではない。少子高齢化の時代がおとずれることは、数十年前から分かっていたのに、その人口動態に対応した社会に脱皮することをせずに問題を先送りにしてきたことが問題なのだ。先送りしてきたのには理由―社会構造がある。問題を先送りにすることで生活が成り立つ人たちもいれば、社会的立場を保てる人たちもいる。問題の本質を十分以上に理解している人たちもいるが、その人たちにしても、人口動態に対応して行政サービスの縮小を有権者―納税者に説明し、納得してもらうのは難しい。便利になったものを手放すには痛みが伴う。

財政赤字はもう手のつけようもないほど肥大化しているが、日常生活をつつがなくおくれていれば、事の緊急性を感じることもない。国レベルでは視野が広すぎて、問題の所在に目が届かないが、小さな自治体であれば、注意すれば見えることもある。安芸高田市で財政の健全化を目指して行政改革を推し進めようとする市長と今まで通りの支出―既得権益を墨守したい議員の間の紛糾が問題の本質を動画で伝えている。

安芸高田市のホームページによると、安芸高田市は広島市の北西に位置する人口二万七千人ほどの典型的な地方都市の一つにみえる。少子高齢化か波が押し寄せて人口減少と税収の落ち込みから、今までのような行政サービスを続ける余裕がない。
日本中どこにでもある風景で、安芸高田市が特別なわけじゃない。ただ一つ安芸高田市には今までの財政運営を根本的に見直す能力と勇気をもった田中市長が登場したことが、他の多くの日本の自治体とは違う。知っている限りではもう一人徳島市長がいる。

財政の健全化、たとえて言うなら、いままで広げてきたあっちこっちの風呂敷をたたまなければならいということになる。民間企業では経済合理性が求められる。なかには同族経営だったりでルーズなところもあるが、市場競争原理が働いている社会では、経済合理性を追求しなければ企業として生き残れない。日米欧の企業で撤退や事業の売却も見てきたというより渦中にいたこともある。撤退や売却など誰もしたくてするわけじゃないが、不採算な事業をいつまでも続けていくわけにはいかない。下手に固執すれば株式市場や金融資本が動き出す。そんな民間企業では必須の常識が通用しない社会の一端――安芸高田市の田中市長と保守議員たちやりとりをYouTubeでイヤと言うほど見てとれる。

税金として徴収されて行政の金庫に入ると、どこから来た金なのかがわからなくなる。わからなくなるということは納税者の顔を思い浮かべることもなく行政の采配で、あるいは議員の要請と決議で支出を決めらえるということにほかならない。
安芸高田市の保守系議員の「主張市民の声だ」には、とんでもない間違いが一つある。どのような政策――市民サービス、市民への便益と言い換えてもいいが、全ての市民、あるいは居住者に全く同じサービスが提供されるわけじゃない。どのようなサービスでもそれを享受できる一部の人たちと享受にあずかれない人たちがいる。子育て支援、老人介護、市民会館、福祉協会や体育館でもなんでもいいが、それを利用できる人ばかりではない。
保守系議員が市民の声といっている市民とは一部の市民のことで、多くの場合、彼らの支持者、あるいは地元町内の人たち、ときには、サービスを提供する事業に関係して禄を食んでいる、あるいは生活費の一部に充当してきている人たちのことでしかない。市政全体でもなければ、市の財政状況を鳥瞰してのはなしでもない。卑近な言葉でいえば、保守系議員の主張は、一部の市民の生活を、他の大多数の市民の血税を使って守ることを目的としているようにしか聞こえない。
こう言っては身も蓋もないが、世の中、信義で動いている人より欲得ずくで動いている人の方が多い。

YouTubeで安芸高田市とでも入力すれば、目を覆いたくなる、ときには吐き気をもよおす様子を動画でみてとれる。いくつかあげておく。一つ表示すれば、右側に議会の様子を示す動画がいやというほど出てくる。繰り返すが、安芸高田市が特別なわけじゃない。日本国中村々から国会まで癒着と利権が蔓延している。

【安芸高田市】清志会の大下議長が石丸市長への対応が悪いことを熊高議員が暴露する【安芸高田市議会】
https://www.youtube.com/watch?v=M5NIr1vjaM0
【安芸高田市議会】既得権益?補助金を減らすと困るんですか?清志会二人の山本議員
https://www.youtube.com/watch?v=83WzqnGbJQ8
【安芸高田市 石丸市長】海外派遣支援 廃止理由がカッコ良すぎ!
https://www.youtube.com/watch?v=rTpQ43gQCV0
【中国新聞次長、石丸市長を恫喝?】闇のトライアングル/清志会/市政刷新ネットワーク/安芸高田市
https://www.youtube.com/watch?v=rz9NUR7sb18
【石丸市政を阻む安芸高田市政斬新ネットワークとは】石丸市長/中国新聞/清志会/闇のトライアングル
https://www.youtube.com/watch?v=qVH6PW8K4Bw
熊高議員、清志会全員の前で「あんたらの市長批判には何の根拠もない」と言い放つ!これぞ議員!2023/9/28【安芸高田市議会】
https://www.youtube.com/watch?v=OTvpOMm2knI
市長のせいで複数の業者が困っとる!!といきり立つも市長に逆質問され何故か焦りまくる山本優議員
https://www.youtube.com/watch?v=LYF4JQK88S4
【ソースは旅番組w】山本数博議員がテレビで仕入れた情報で質問、石丸市長を困惑させる「あるも無いもそもそも・・・」(広島県安芸高田市)
https://www.youtube.com/watch?v=FwPdsy4YZOM

地方に行けば行くほど、地縁や血縁やらなんやらも絡んで、最近の言葉で言えばコミュニティのいままでの社会のありようをそのまま続けていきたいという素朴な思いが財政の健全化への抵抗となって現れる。それは地域の商店街の存在もあれば、議員も絡んだ地域の利権と化している特権のようなものまである。地域の政治団体はいうにおよばず、商工業者の団体もあれば地域の新聞やテレビなどのマスコミまでその利権化した特権に絡むことによって美味しい思いをしてきた背景がある。
ちょっと想像してみてほしい。多くの地方紙やテレビ局は地域の名士―経済的、政治的に社会を担っていた人たちよって設立された。その人たちが設立して今日にいたった新聞やテレビが保守系の呪縛から外れて、財政改革を支持する側にまわれるか?それは国レベルではなく安芸高田市のような小さな地方都市を舞台としたときにこそ見えてくる。
田中市長が市政の運営と市議会の議論を脚色することなく直接市民に伝えている。市民に状況をつぶさに伝えて、市民の市民意識の向上、そして自分たち市民がつくった社会で議会で、自分たちが住みたいと思う街にしていくための基礎作りをしているように見える。目指しているのは、住みたいと思う以上に誇りに思える街のような気がする。
YouTubeをみるたびに、田中市長が事故にでもあわないかと心配になる。
いつでもどこでも言えることだと思うが、自分(たち)で広げた風呂敷を自分(たち)でたためる人は滅多にいない。
2023/10/16 初稿
2023/12/5 改版