三人集まれば文殊の知恵?

Webで情報を漁りながらあれこれ考えていると、格言やことわざが思い浮かんでくることがある。するっと抜けられればいいが、童謡のようにはいかない。童謡なら、歌詞に辻褄があろうがなかろうが、ひっかかることはない。格言やことわざだとそうはいかない。誰がどういう状況下で、何を目的にそんなことを言い出したのかまで考えだしてしまう。
横道にそれて、それまで何を考えていたのか分からなくなってしまうことも多い。しゃくにさわるが、意識してのことではないだけになんともならない。

六十半ばでやっと便利屋稼業から足をあらえた。仕事をしていないから人さまの目には暇人に見えるだろうが、残り少ない時間でやり残したあれもこれも思うから、なんだかんだで忙しい。なんで格言やことわざにひっかかってしまうのか?限られた時間がもったいない。昔の人の言い草なんか知ったことか、忘れちまえ、お前はバカかとどなりたくなる。まったくもって情けない。もって生まれたのか性質なのか、ろくでもない社会経験をしてきたせいなのかとイヤになる。

年の瀬も押し詰まって、みんなばたばたしてるのに、世間離れもいい加減にしたらと笑われそうだが、「三人集まれば文殊の知恵」が気になってしょうがない。
いままで散々見聞きしても気にもならなかったのに、どうしたものか思い出しては腹がたつ。
そもそも文殊とはなんなのか?普通の生活をおくっている限り、そんな言葉に出くわすことはない。ググればすぐにわかるが、ググるのも癪にさわる。整理するためにはしょうがない。腹立ちまぎれにググってみた。「文殊菩薩の略で、知恵をつかさどる菩薩のこと」だそうだ。ここで菩薩とは?なんて思い出すと、そこから横道にそれてしまう。
「三人集まれば文殊の知恵」はつまるところ、政治的に文化的に支配者の立場いるヤカラが、菩薩を引き合いにして、上から目線での言い草だろう。知識も教養も限れている下々のお前らでも、三人も集まれば、それなりにしても文殊菩薩のお考えにちょっとは近いところに、と言っているように聞こえてならない。腹がたつといっているのをご理解いただけたらと思う。

どうにも腹立たしいが、仕事で経験したというか、目にしてきたことは、そんな甘ったれた状態より遥かに下劣なものだった。ちょっと想像してみて欲しい。志向も嗜好も社会や組織内で立場も違えば、出自も経歴も違う。思いも違えば興味も損得勘定も合わないのが、確たる情報もなしで限られた知識をもって三人集まって、文殊の知恵?しばし違いがすぎて、会話が成り立たないことすらある。たとえ話になったところで、よくて世間話の延長線か、身近の愚痴で終わりだろう。
仕事で会議というのか話し合いというのには、うんざりするほど出てきた。午前中に一回、午後に二回、そして残業時間にまで会議が続いたとき、いい加減呆れかえって、冗談半分に会議出席要員という役職の名刺を作ってみるかとすら思ったこともある。どの会議でもでてくるのは、現状の表層を掴んだつもりでいる痴れ者とそんなことにゃ興味のないヤツらに議論のための議論に終始する無駄飯食い連中だった。結論なんてはいつも決まって、「情報交換をしっかして、みんなでがんばりましょう」てなものばかりだった。何がどのような事実に基づいての話しなんて考えはどこにもない。
キャリア組はキャリアに傷がつきそうなことはノンキャリアに押し付けてそつなくやってればいいだけだし、ノンキャリアは上手へつらって恙なくが処世術ってもんだろう。減点法が染みついた組織で下手に自分で考えを言ってか何かして、上手くいかなかったらどうするかなんて心配するんだったら、上に言われたことをハイハイとやってりゃいいとしか思っちゃない。そもそも阿る、下賜する文化のもとで、まともな議論なんかできやしない。

何をしてもしなくても、それぞれの立場が脅かされるようなことでもなければ、誰もこれと言った実のある主張なんかしやしない。というよりするだけの知識もなければ能力もない。ましてや自らの意思で?そんなもの上下関係でなりたっている組織では危険思想に近い。
やることもやり方も変えなきゃならないこっちにとっちゃ、みんなの合意のもと改革を進めているという体裁さえ整えばいいだけで、三人集まれば文殊の知恵がいうところの三人なんかに何も期待しちゃいない。政治生命をかけた改革ってのは、現状に浸ってゆったりしている大勢に反対されることはあっても支持されることはない。大勢が賛成する改革なんてのは、名前だけの改革に過ぎない。

こっちの作業が進んで立場が危うくなってきて、あわてて騒ぎ出すのがいるが、そんなもんにかかわってたら、改革なんかできやしない。明日の来年の三年後のありように向けて走り始めた組織で、昨日のことを持ちだして、ああだのこうだのって言ってくるのは、ただの恥さらし、文殊の知恵の三人ですって名乗りでているようなもんだろう。
こっちは渡りの傭兵稼業のような身、早々にヘゲモニーの支配を確立して、数年のうちにはしっかりした筋道をつけて後進に引き継いで、次の戦場にいかなきゃならない。現状に浸ってあるがままなりってわけにゃいかない。

p.s.
ちょっと前に書いた雑文を推敲していて気が付いた。三人集まれば文殊の知恵?何を言ってんだかと思いだしたのは、多分YouTubeで安芸高田市の清志会の議員連中の体たらくを目にしたからだと思う。
2023/12/17