遺伝子移植でキャベンディッシュにパナマ病耐性を(改版)

「安くて美味しくて手軽なフルーツ」はバナナしかないだろうと思いながらググったら、下記が出てきた。
「安くて栄養価が高いフルーツ 3位『オレンジ』、2位『柿』、1位は?」
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2304/30/news034.html
2023年04月30日 07時00分 公開
「価格に対して栄養価が高い、費用対効果ならぬ『費用対栄養価』が高いフルーツは何だろうか。日本バナナ輸入組合(東京都千代田区)と商品開発を手掛けるSmile meal(東京都江東区)が共同で実施した調査によると、1位は『バナナ』であることが分かった」

関係者の調査結果にしても、調査するまでもなく分かっていたことじゃないかと思う。首と腹の手術で四回入院したが、病院食には必ずといって言いほどバナナがついていた。同じバナナでもこんなにまずい品種もあるのかというおまけつきだが、栄養豊富というだけでなく消化もいいんだろ。
もう十年も前になるが、そんなバナナ(キャベンディッシュ種)が絶滅に瀕しているというニュースを見た。まさかと思っていたら、いくらもしないうちに行きつけのスーパーの棚からスィーティオ(Doleの商品名?)が消えてなくなっていた。

キャベンディッシュについてウィキペディアには次の記述がある。
キャベンディッシュ(英語: Cavendish)は、バナナの栽培品種。
「1950年代以降、キャベンディッシュはもっとも流通量の多い栽培品種であり[1]、パナマ病によって荒廃したグロス・ミチェルから主役の座を奪った」
「1998年から2000年の統計において、キャベンディッシュは世界で生産されるバナナの47%を占めており、国際取引に用いられるバナナの大半を占めていた[1]。日本国内ではほぼこれ1種類のみが常食範囲内である」
「キャベンディッシュはグロス・ミチェルが植えられていた土壌でも生育したため、つる割病(パナマ病)に対する耐性が強いと信じられた。しかし2008年半ばには、スマトラ島やマレーシアでつる割病に侵されたキャベンディッシュが報告されている[8]。人為的に栽培されているキャベンディッシュは有性生殖ではなく栄養生殖によって繁殖するため、キャベンディッシュのクローンは遺伝的に同一であり、病害抵抗性が徐々に低下する」

「新パナマ病がついに中南米に上陸」
https://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v16/n10/%E6%96%B0%E3%83%91%E3%83%8A%E3%83%9E%E7%97%85%E3%81%8C%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%AB%E4%B8%AD%E5%8D%97%E7%B1%B3%E3%81%AB%E4%B8%8A%E9%99%B8/100396
原文は19 August 2019付けのNatureの記事。日本語訳は三枝小夜子さん。
翻訳された記事の主要個所は下記のとおり。
「バナナを枯死させるFoc(土菌類の一種)は、1900年中頃、中南米パナマでバナナに農業史上最悪の被害をもたらしたことから、俗に『パナマ病』と呼ばれる。この時に流行したFocはTR1で、当時主に流通していたグロスミッシェル種のバナナは壊滅的な被害を受けた。Focは除去が困難であったことから、TR1に強いキャベンディッシュ種が広く栽培されるようになった。キャベンディッシュ種は現在では、食料品店で売られているバナナの主な品種であり、輸出されるバナナの中で圧倒的に大きな割合を占めている。だがTR4は、このキャベンディッシュ種とプランテイン(熱帯のバショウ科バショウ属の多年草で、料理用バナナとも呼ばれる)に感染する」

「TR4は、1990年代からアジアでキャベンディッシュ種を枯死させ始め、その後、オーストラリアに広まり、さらにアフリカへと拡散した。この真菌はバナナの根に感染し、維管束系を通って隅々まで広がる。そしてバナナは、水と栄養分が取れなくなって枯死してしまう。TR4は、感染した植物を別の土地に移動させることで広まる他、水や土壌を通じて広まることもある」
「TR4に有効な殺菌剤は見つかっていないため、さらなる広がりを食い止めることが主な対処法となる(「中南米に忍び寄る脅威」参照)。ICAは、被害を受けた農園のほとんどのバナナの株を処分したと言うが、TR4は約30年は土壌中にとどまり得る」

記事をまとめれば、「パナマ病に耐性のあるキャベンディッシュがバナナの世界中で主流になったが、新パナマ病によって絶滅の危機に瀕している」になる。日本でフルーツとして食されているバナナはほとんどすべてキャベンディッシュだから、新パナマ病を引き起こす真菌TR4を死滅する農薬かTR4に耐性のある新品種を早急に開発しないと、今までのように安価で栄養豊富なバナナを食べられなくなる。

そこに、遺伝子移植による新パナマ病に耐性のあるバナナがオーストラリアで開発されたというニュースが入ってきた。
「Genetically modified banana resistant to Panama disease given approval for Australian consumption」
https://www.abc.net.au/news/2024-02-16/australia-approves-first-genetically-modified-banana-panama-tr4/103476986?utm_source=Live+Audience&utm_campaign=379f11e430-briefing-dy-20240219&utm_medium=email&utm_term=0_b27a691814-379f11e430-50777512
表題を機械翻訳すると下記になる。
「パナマ病に耐性のある遺伝子組み換えバナナがオーストラリアの食用に承認される」

訳ではパナマ病となっているが、TR4耐性と言っているから、新パナマ病耐性であることは間違いないだろう。
記事の気になるところを書きうつしておく。
「科学者たちは、東南アジアの多くの地域に生息する野生のバナナ、Musa acuminata ssp malaccensisと呼ばれるバナナからパナマTR4にほぼ免疫のある遺伝子を発見し、その遺伝子を含むキャベンディッシュの品種を作りました」
「我々はバナナの遺伝子をあるバナナから別のバナナに移したのです」

<遺伝子組み換えバナナは安全か?>
遺伝子組み換えバナナと言っているが、野生種のバナナの遺伝子をキャベンディッシュ移植したのだから、遺伝子移植バナナと呼ぶべきじゃないかと思う。
まだこの新種が救世主になると言いきれないが、可能性が一つ見えてきたことだけは間違いないだろう。
新パナマ病で枯死に追い込まれているところに新キャベンディッシュが登場すれば、キャベンディッシュの作付けが急速に減って市場から姿を消して新キャベンディシュだけになるだろう。日本では遺伝子組み換え食品に対して感情的な?反感を持っている人が多い。その人たち新キャベンディシュを受け入れるのか、それとももうバナナは食べないと言い出すのか気になる。

p.s.
<果物などに貼られているシール>
バナナの安全性については、興味深いYouTubeがいくつもある。
一つ例をしてあげておく。
「スーパーに売っている闇バナナとシールに隠された秘密【安全なバナナの見分け方】
https://www.youtube.com/watch?v=RM2ymRpK_DQ

<浸透性農薬>
空中散布された農薬はバナナの皮に付着してるのだから、バナナの皮をむけばいいんじゃないと考える人も多いだろう。ところが根から吸収されて植物の全ての組織に運ばれる浸透性農薬が普及したことによって、皮をむけばというのは昔の話になってしまった。
2024/2/29 初稿
2024/4/24 改版