遺伝子編集ブタの腎臓を移植

四月四日付けのBBCのニュースをみて、ついにここまで来たのかと驚いた。
「Pig kidney transplant patient leaves hospital」と題する記事で、後日みつけた日本語版では「ブタの腎臓移植を受けた男性が退院、経過良好 脳死ではない患者への移植は世界初」となっている。urlは下記の通り。
https://www.bbc.com/japanese/articles/c258409k8p8o

疑問や問題となる視点に入る前に、記事の要点を機械翻訳したものを列記しておく。
「マサチューセッツ総合病院(MGH)は3日、遺伝子を改変したブタの腎臓の移植手術を受けた患者が同日退院した」
「遺伝子を改変したブタの臓器移植は過去にも行われたことがあるが、失敗に終わっている。経過は良好で、移植分野における歴史的転換点」
「末期の腎臓病を患っており、臓器移植が必要な状態だった」
「移植された腎臓は順調に機能しており、透析を受ける必要はなくなった」
「ブタの腎臓が人間に移植されたのは今回が初めてだが、過去にはブタの心臓移植が行われている」
「ブタの心臓を移植された患者2人は、手術から数週間後に死亡した」
「ブタの臓器をヒトに移植できるようになれば、移植医療は新たな時代に突入する。無傷の臓器や細胞が移植用に無制限に入手できるようになり、最終的には、死亡したヒトや生きているヒトからの提供は時代遅れになるだろう。さらに、移植元動物の遺伝子組み換えによって、少なくとも部分的には移植片の拒絶反応を緩和することが可能になる」

状況を整理しておくと、
1) なぜヒトの臓器移植(同種移植)ではなく、動物からヒトへ臓器移植(異種移植)なのか?
免疫による拒絶反応を抑える薬が開発されたことから同種移植が盛んになったが、移植する臓器の提供が間に合わなくなった。臓器不足を解決すべく動物の臓器を使えないかと研究が進んだ。
2) なぜブタなのか?
ブタの臓器は解剖学的に人間の臓器と似ていて、様々なサイズのブタがいる。
家畜化されていて飼育しやすいし出産数も多い。
食用として年間何百万頭のブタが屠殺されているから、臓器移植に使っても社会的な問題になりにくい。
クローニングが成功しているうえに遺伝子操作に適していて、遺伝子編集によって拒絶反応を緩和しやすい。
3) 感染症のリスク
微生物学的病原体の感染は、厳格に管理した飼育環境を整えることで最小限に抑えられる。

ここで大きな問題が一つある。
科学技術が発達して、ついに異種移植が実用化されようとしているが、広く社会で受け入れられるのか?
受け入れられるのであれば、人為的に遺伝子を操作した動植物を安全性の保障をたてに頑なに拒んできた人たちはどうするのか?加工食品どころか飼料の使用も拒否してきたのに、遺伝子編集されたブタの臓器を移植にも反対するのか?生きたブタの臓器を体内に入れてがOKなら、食べることになんの問題があるのか?辻褄の合う話をお聞きできたらと思う。ことは直接人の命にかかわるから。

<参考>
National Library of Medicine - National Institutes of Healthが出している移植外科医の見解が分かりやすい。
「The potential advantages of transplanting organs from pig to man: A transplant Surgeon's view」
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2721611/
表題を機械翻訳すると、下記になる。
「ブタからヒトへの臓器移植の潜在的利点: 移植外科医の見解」

National Library of Medicineについては下記urlからどうぞ。
https://www.nlm.nih.gov
2024/4/18