大衆に向けて発信しようとしない左翼インテリ(改版)

Yahoo NewsがThe Atlanticの論説『The diploma divide is driving American politics』を転送してきた。ざっと機械翻訳した。
『所属する社会層から出ない左翼インテリ』
「卒業証書格差がアメリカ政治を動かしている。ドナルド・トランプは、大卒のエリートに激怒する何百万人もの高卒有権者の支持を得て、政権に返り咲いた」
「しかし、卒業証書格差は政治的格差だけではない。社会的な格差でもある。高卒者は大卒者よりも平均して8歳若く死ぬ。オピオイド中毒や婚外子、肥満、親しい友人がいないといった理由で死亡する確率も高い。裕福な家庭の子供とそうでない家庭の子供との学力差は、ジム・クロウ(合法的人種差別の)時代の白人と黒人の生徒の学力差よりも大きい」

「アメリカ社会を分断している溝があり、それは主に教育レベルによって定義されている。この1年間、私はこの溝がどこから来たのか、そして溝を埋めるために何ができるのかを理解しようと努めてきた」
「その結果、この溝はただできたものではないことがわかった。作られたのだ。20世紀半ば、良識ある大学経営者たちが、アメリカを知能によって隔離しようと決めたのだ。彼らは知能を、学問的な場や標準化されたテストでよい結果を出す能力という、非常に特殊で狭い方法で定義した」
「こうしたスキルを持つ学生はエリート大学に入学し、金融、法律、政府、メディア、大企業など、社会の頂点に立つ仕事に就いた。そして、そのようなスキルを持つ者同士が結婚し、その子どもたちに多額の投資をし、その子どもたちも同じエリート大学に進学する」

何を今さらと思っていたら、十二月十八日付けでgendai.mediaが評論家 塩原俊彦さんの「あのクルーグマン教授が最後のコラムで強調した『トランプ=カキストクラシー政治』とは?」と題した論説を配信してきた。
工員になりそこなった巷のオヤジ、勉強不足で「カキストクラシー政治」と言われても、何のことだかわからない。いつものようにググったら、下記がでてきた。
「カキストクラシー(英語: kakistocracy)とは、極悪人政治、悪徳政治を指す用語。 最悪の者、能力の無い者、あるいはほぼ悪意のある市民により運営されている国や地域のこと。 この用語は、1829年にイギリスの著作家Thomas Love Peacockにより使用された」
トランプやその取り巻きには受け入れがたい生理的な嫌悪感まである。ただカキトクラシー=極悪人政治といって説明がつくとは思えない。賢人政治も悪人政治も選挙で投票する人たちの民度と民意の反映でしかない。問題はなぜ極悪人政治が生れるのかにある。

塩原さんは、マスコミの体たらくを語った後に、「学者へのぬぐえぬ不信」と題して状況の一端を書きにまとめている。
「残念ながら、紹介したクルーグマンの最後の言葉、「今まさに台頭しつつある最悪な者による支配、すなわちカキストクラシーに立ち向かえば、いずれはより良い世界への道を見出すことができるかもしれない」に感銘を受ける人は少ないだろう。なぜなら、もはや彼らのような学者に対する信頼も薄らいでいるからだ」

クルーグマンのコラムも塩原さんの論説も仰せの通りでなんの異論もない。ただ一つ大事な視が欠けているように思えてならない。
それはアメリカの識字率で、基礎教育を受けきっていない人たちが有権者の過半数をしめている。
拙稿「モスクワの茶番ータッカー・カールソン」の一文を書きうつして置く。
ちきゅう座に掲載していただいたurlは下記の通り。
https://chikyuza.net/%E3%83%A2%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AF%E3%81%AE%E8%8C%B6%E7%95%AA%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%83%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%BD%E3%83%B3/
「Nationwide, on average, 79% of U.S. adults are literate in 2022. 21% of adults in the US are illiterate in 2022. 54% of adults have a literacy below sixth-grade level. 21% of Americans 18 and older are illiterate in 2022.」
機械翻訳は下記の通り。
「全米平均で、2022年には米国成人の79%が識字能力を有する。2022年には全米の成人の21%が非識字者である。成人の54%が小学校6年生以下の識字率。2022年には18歳以上のアメリカ人の21%が非識字者である」 ここにトランプを支持する社会層がいる。そしてその社会層をメシの種とするマスコミが存在する。

これ以上はないという情報公開のもとに公正な選挙が行われようが、有権者が公開された情報を理解しえなければ、目の前で起きていることを都合よくかいつまんだ荒唐無稽なプロパンダに引きずられる有権者が大勢を決めることになる。
「ドナルド・トランプは、大卒のエリートに激怒する何百万人もの高卒有権者の支持を得て、政権に返り咲いた」というAtlanticの指摘を言い換えれば、「有権者の過半数を占める大衆は、大卒のエリート連中のせいで生活が苦しくなったと怒っている」になる。
アメリカ人の過半数はNew York TimesやAtlanticなどという左傾の知識人向けの新聞や雑誌に手にすることない。たとえ手にしたとしても学者や研究者、さらにはジャーナリストたちの、こうだからこうで……といった理詰めの解説など理解しようがない。とういうより、理解するだけの基礎知識を持ち合わせていない。

「カキストクラシー(極悪人政治)を生み出したのは、直接的には一般大衆だが、その一般大衆が理解しえない情報を発信して、左翼知識人が悪徳政治だと批判し嘆いているようにみえる。大衆の民度や民意、あえて大雑把にいえば社会常識の形成に直接の責任はマスコミにあるが、そのマスコミが発信する知識や情報を生み出すのは知識人階級で、その知識人階級が大衆が理解できる情報を提供してこなかった、していないことに問題の本質がある。
トランプに代表されるカキストクラシー(極悪人政治)を云々するのはいいが、それは天にむかって唾を吐くようなものだとわかってのことなかと左翼知識人に訊きたくなる。

こんなことを書いてはいるが、愚生はノンキャリアとして生きてきたれっきとした庶民のひとりで、巷でいうキャリア組には泣かされてきたし、知識人には畏敬と羨望の念がある。しっかり教育を受けてこなかった庶民が知識人のご高説を理解できるようになるのは難しい。その難しさと知識人が庶民にもわかるように社会のありようを説くのとどっちの方が難しいのだろう?問うまでもないと思うのだが。そこで知識人にお願いがある。ご自身が所属している社会集団から一二歩でいいから庶民の社会集団に足を向けてもらえないか。
2024/12/29 初稿
2025/2/3 改版