尼崎と尼崎、そして尼崎

<序>
やっと着いたぜ。北新地に比べればこっちの方がよっぽど楽じゃねぇーか。えーっと予約のプリントアプトはと。えーっと、ほとんど駅前、眼と鼻の先だ。ちょっと右寄り、迷子になんかなろうったってなりようがない。しかし、人通りの少ない、ちびた商店がならんで、どこが危ないってんだろうね。えーっと、直ぐそこだ。あれ、どうなってんだこりゃ、パチンコ屋じゃねぇーか。なんでここにパチンコ屋なの。よしてくれ、どこをどう見たって、ここには東横インがあるはずじゃねぇーのか?どうなってっんだ。後ろを見ればそこに“尼崎”駅。確かに“尼崎”駅はある。前を見れば直ぐそこに“東横イン”があるはず。でもあるのはパチンコ屋だ。
全く、しょうがねぇ〜な、いったいどうなってんだ。えーっと確か東横イン尼崎の電話番号も地図の下にあったはずだ。何、おいおい、悪い冗談はよしてく、東横インは間違いなく“尼崎“駅の前にある。そうりゃそうだろう、旅の窓口で予約して、プリントアウトした地図にもそう描いてある。老眼でちっちゃな字はよく見えねぇ〜が、この地図のサイズなら”尼崎“って誰の目にも見える。東横イン尼崎に電話してと。。。おいおい、うそだろう、こっちの”尼崎“駅、新大阪駅から大阪駅、塚本駅を通過して着いた”尼崎”はJRの“尼崎”駅で、東横インがある“尼崎”駅は阪神電鉄の“尼崎”。なに、そっちの“尼崎“駅まで、歩いて四十分くらいかかるって。よしてくれ、一週間の出張でキャリーバッグを引きずって四十分はないだろう。
そもそも、なんで全く同じ名前の駅が、”尼崎“と”尼崎“が、それも徒歩で四十分も離れたところに、お互い”尼崎“ですってあるの。”尼崎“の本家争いでもしている訳でもあるまいし、なんでどっちも裸の”尼崎“なの。北尼崎でも南でも、本尼崎でも新尼崎でもいい、地の利のない人、それも地図からではなくホテル予約の便利サイトできちんと”尼崎“と入力して宿泊予約をする人には、どっちの”尼崎”も同じ“尼崎”としてでてくる。“尼崎”駅は徒歩で四十分も離れたところにもう一つの“尼崎”駅があるってことを知ってる人は注意してどっちの“尼崎“なのか確認するだろうけど、知らない人は、でてきた”尼崎“が唯一無二のといほど大げさじゃないにしても、もう一つの”尼崎“あるなんてこと想像だにしない。
<結>
今度の馬鹿馬鹿しいトラブルで時間にして小一時間“尼崎”市内にいけだから尼崎がどんなところかは知らない。噂じゃガラが悪いところ、やっかいなことに巻き込まれる可能性のあるところとして、出張の宿泊先としてはお薦めできない所と聞いている。それにもかかわらず、敢えてJRの“尼崎”駅近くのホテルに宿泊しようとしたのは下記の馬鹿げた理由からからだ。
知り合いが転職した。数カ月後に市場開拓やら営業のあり方の改善にためにちょっと来ないかという話。まあ、傭兵稼業、お役に立てる戦場があれば駆けつける。行く前から聞いてはいたが、大阪支店には工場もあるし技術陣も営業部隊もそれなりにいるが東京にはいない。東京にいたのでは仕事にならない。で、しょうがないから隔週で大阪出張ということになった。
大阪支店は“加島”駅から歩き方にもよるが徒歩十五分くらいかかる。十五分、キャリーバッグを引いては辛い。それで、新大阪から大阪駅にでて、そこから北新地のコーポレート契約したホテルにキャリーバッグを預けて、東西線の“北新地”駅から“加島”駅に行って、そこから徒歩になる。大阪出張中は東西線の“北新地”駅と“加島”駅間、駅の数にして四駅の通勤になる。
大阪には行きたくて行ってる訳じゃない。出張経費がかさむからというのであれば、東京で仕事が出来るようにして頂ければそっちの方がありがたい。傭兵に仕事の環境を提供するのは、クライアントの責任であって、環境不備が原因で傭兵のアウトプットが思うように出ないということについて、傭兵は責任のとりようがない。他力本願の人達にはありがちなことなのだが、誰かに任せれば、押し付ければ解決したものだと思っている節がある。解決し得る環境がなければ誰にもどうしようもない。おそらく巷の八百万の神でもどうしようもない。あまりに当たり前のことで常識の範疇だろう。
そのようななかでも、クライアントの出張経費を五円でも十円でも抑えようと、“加島“駅へのアクセスを考えて、まず”尼崎“駅前の東急インを試してみようと。東急イン、身障者施設の一件で人として、企業としてあらざることが露呈した。できれば利用したくないが一泊6,500円。北新地のホテルは一泊7,500円。一泊1,000 、四泊で4,000円節約できる。
尼崎違いでしょうがない。JR”尼崎“駅前からタクシーで阪神電鉄”尼崎“駅に行って、東横インのカウンターで聞いた。ここから”加島“駅に行くにはどうしたらいいのか?阪神電鉄で”梅田“駅(JRでは”大阪“駅) に出て、そこから徒歩で”北新地“駅に行って、東西線で”加島“駅。おいおい、それじゃまるで、北新地のホテルに泊まっているときのルートに、阪神電鉄”尼崎“駅から”梅田“駅までを追加したことになる。キャリーバッグを引きずって歩くのは避けたかったから、一応東横イン”尼崎“で預かってもらって、言われた通りの経路で事務所に着いた。
しょうがない、JR“塚本”駅の近くに確かホテルオークスがあった。“塚本”から事務所までは徒歩になる。二十分では着かない。いい運動と思えばいいじゃないかと。随分前になるが何かの時に新大阪か京都あたりのオークスに宿泊したことがある。宿泊して疲れた記憶がある。できれば泊まりたくないし、朝夕二十分以上歩くのもできれば遠慮させて頂きたい。勝手な私生活上の思いだが、住まいは駅から五分以内と決めている。それでもしょうがない、”塚本”駅近くのホテルオークスにお世話になった。一泊5,500円。北新地のホテルに比べれて一泊2,000、四泊で8,000円の経費節約だ。“北新地“駅⇔”加島“駅間の電車通勤もないから、一日往復で340円、五日間で1,700円の節約だ。ホテルを変えることによって、8,000円+1,700円=9,700円の節約になる。実費精算だから節約は会社のためで、個人のためでないことを言っておく。自分の金は自分の責任で使う。会社の金は自分の責任で使わない。些細な予算で後ろ指を刺されるようことは避けたい。
ちまちました経費節減のお陰で、“尼崎”駅が二つあることを知った。その二つが目と鼻の先ではなく徒歩四十分も離れていることにも驚いた。どこでも分かりにくい、間違いやすいというのはある。中央線の“東小金井”駅には、「ここは“武蔵小金井”駅ではありません。武蔵小金井駅は、次の駅です。」という看板があった。東京から立川方面の中央線に乗って、東小金井駅に着くまではちょっと乗りがいがある。“xxx小金井”と聞いて、さっと降りてしまう乗客がいる。横浜市営地下鉄の一つの駅名が十年程前に変わった。東急田園都市線から横浜市営地下鉄で新横浜駅に向かうとき、新横浜駅の一つ前に”新横浜北“という、関西風の命名なのか?があった。地下鉄だ、もとものバックグランドノイズは大きい。”北“を聞き取れずに”新横浜“に着いたと思って降車してしまう乗客がいる。少しでも間違い難いようにと、”新横浜北“という駅名が”北新横浜“という関東の駅名の響きになった。銀座と有楽町、日比谷、どれも目と鼻の先にある。山手線の原宿とくっついた地下鉄千代田線の明治神宮前なんてのは、原宿にしておけば何でもなかったものを、右翼が明治神宮という駅名にでもしたかったのではないかと勘ぐってしまう。昔からあって知られた原宿にしておけばいいのに、地の利のない人に余計な混乱をと思う。
呆れた二つの“尼崎と”尼崎“。分かりにくい、間違い易いというレベルを超えている。間違って当たりまえ。それがそのまま何年続いているのか、いい加減にしたらと、余計なお節介になるが、
まさか、あの常軌を逸した、かなりおかしな人でもあそこまでの異常は想像できない。尼崎といえは、駅より町より角田某があまりにも図抜けて知られている。忘れられるまでにはまだちょっと時間がかかるだろう。もしかして、JRの“尼崎と阪神電鉄の”尼崎“、あの角田某の”尼崎“はこっちの”尼崎“ではなく、あっちの”尼崎“ですよという負の尼崎のなすりあいしているわけでもあるまいし。
どこでも駅名は何かの都合で変えられてきた。ある意味由緒ありすぎる“玉ノ井”駅はその由緒が気になってか“東向島”駅になったし、こっちも由緒ある”業平橋“駅が”とうきょうスカイツリー“駅に。昔を知ってる者には寂しい限りだが、駅名も世の移り変わりを表してということだろう。
フツーに聞こえてくる“尼崎”にプラスのイメージはない。いっそのことどっちでもいいが、駅名を“尼崎”から聞こえのいいものに変えたらどうなんだろう。余計なお節介。お節介になるような立場になることすら躊躇する角田某に象徴される“尼崎”。
数人の親しい知り合いからは、よしたほうがいい、止めといた方がいいと何度も言われたが、試してみた。また、いい勉強をさせて頂いた。
2013/9/15