組織−存在目的

本来、組織は目的(企業においては戦略を遂行する)のために作られるはずのもので、組織が先にあってその組織の能力に合わせて目的を決める訳ではない。ところが誰も歴史的経緯から自由ではないという現実がある。実社会では、往々にして歴史的経緯のある組織が先にあり、その組織の運営という目的が優先される。その結果、企業や組織の本来の存在理由である目的(戦略遂行)が組織の運営という目先の目的に従属させられる。
特定の事業目的のために新しく設立された企業や組織は組織として歴史がないだけに今までの経緯に縛られることが少ない。ただ、そのような組織でも、組織を構成する人達はそれぞれの経緯を持って参加している。個人レベルでみれば過去の経緯から自由ではない。比較の問題になるが、歴史のある企業や組織は、新しく設立された企業や組織に比べ、過去からのプラスの遺産も多いが、新しいことをしようとしたとき、新しく設立された組織に比べ歴史的、文化的に経緯に縛られることが多い。
何を当たり前のことを言っていると思われるだろうが、歴史に培われた組織が、確立された組織であればあるほど、新しい事業目的に遂行の足かせになる可能性が高い。歴史的経緯は新しい事業の計画検討から遂行に至るまで最大の阻害要因にすらなる。
企業は社会共同体の歴史の中から必然として生まれてきたものではない。事業を推進するという目的のために設立された人為的な組織ででしかない。本来特定の目的達成−そのための戦略を実行するために設立された組織が時の経過とともに、当初の目的を達成するためだけでなく、あるいは新しく目的として設定された目的を達成するための機能を供給され、自己進化してゆく。
進化はするが、環境の変化の質と速度が急激だと組織の進化が間に合わない悲劇が起こる。環境の変化、すなわち社会と市場の変化に適合し得ない組織は、社会の変化を阻害することにその存在理由を求めかねない組織に堕することすらある。変わってもらっては困る人達とその集団、既得権益層が常に存在する。
繰り返しになるが、企業組織存在の基本に戻って言えば、企業組織は戦略を遂行するために存在する。従って、戦略を遂行するために最も適した組織を構築するのが本来のありかたになる。戦略なしに、戦略遂行に最適化した組織はあり得ない。戦略があったとしても先に述べたように歴史的経緯から制限がかかる。国や企業文化によっては、既存組織を、事業体を丸々売却して、戦略遂行に最適な新しい組織づくりが容易な場合もあるだろうが、経営としては既存組織の最大限の活用が求められる。過去からの遺産を引きずり、既存組織の限界とその成長を求めながら、最大限に活用して戦略を遂行せざるを得ない。そのなかで今の戦略、将来とるであろう戦略の遂行により適した組織の構築を試みることになる。
2013/11/24