経済紙

スポーツ紙などプライベートの関心で読む新聞とは違って仕事の関係で目を通しておかねばという理由で読まれている業界紙と呼ばれる新聞がある。そうした新聞の多くは特定の業界を中心に関連業界を扱っているが、中には一般紙のような顔を持つに至ったものもある。そのカバーしている業界が広い(質とは言えないのが寂しい)が故に、その一紙にさえ目を通しておけば、サラリーマン(ウーマン)が常識?として持っていなければならない情報を取れる、逆に言えば、読んでなければ脱落してしまうのではないかという恐怖心まで醸成されてしまっているのではないかとすら思える節がある。
企業によっては、強制ではないだろうが、新卒者にこの新聞を読むようにという指導さえしているところがあると聞く。朝の混んだ通勤電車のなかでかなり広い年齢層の方々が窮屈な思いをしながら、その経済新聞を読まれているのを目にすることがある。そこまでして毎朝目を通す価値があるのか?確かに業界、業種、職種によっては絶対目を通さなければならない方々といらっしゃると思う。ニュースがたとえ「がせ」であっても、その「がせ」に即の対処をしなければならない立場の人もいるだろう。しかし、全購読者に対してそのような方々が占める割合はたかが知れているはずだ。多くの読者は自らの職責をまっとうせんがために、経済という側面から広く産業界全般の知識を得ようとされていらっしゃるのだろうと想像している。
もし、そうだとすると、その経済紙の記事にどれほどの価値があるのかという疑問を拭いきれないでいる。というより、はっきり言わせて頂ければ、個人的には特にその経済紙とその新聞社が発行している他の新聞、雑誌に掲載されている記事をまず疑いの目で見て、情報としては多少の参考にはするが、多くの場合世間話の種にする程度としている。 新聞としてより広く様々な業界をカバーすれば、各業界に散った読者を獲得し発行部数を伸ばせるが、個々の業界への突っ込みは浅くなる危険がある。この広く、また深くを両立できている新聞、雑誌は非常に少ない。
昨日、今日サラリーマンを始めたわけでもなく、自らのビジネスの領域ではそこそこの知識、理解を持っている歳になって、自らが直接関与していることに関する記事に遭遇すると、その記事の信憑性を評価させて頂く機会を頂戴することになる。不幸?にして今までそのような機会を何度か頂戴した。中には一面トップの大見出しでスクープとして報道されたものがあった。まだその業界での仕事を始めて何年も経っていなかったが、記事をざっと読んで、結論は、「ありえない」だった。心配なので即、関係各社に電話を入れて真偽の程を確かめた。口を揃えて、あれは、xxxが流した「がせ」だ、で終わりだった。慌てて電話をした自分が恥ずかしかった。
口頭だけの取材だと危険なので、紙面の大きさまで確認した上でこのままでも記事として使えるところまで丁寧に書いた原稿を提供したにもかかわらず、どこで何を間違ったのか出た記事は主旨とは全く反対の内容のものになっていて大騒ぎになったこともある。こんな経験を何度かさせられれば、どのような記事でも鵜呑みにしない読み方になる。
記事の対象が広告主のことも多いので、やらせ記事とは行かないまでも、悪いことは書きにくいだろうと想像する。そんなことは絶対していないと言えるだけの新聞があるのか?
真偽の程は知らないが、ワシントンポストの社主だったキャサリン・グラハムが毛沢東の時代の中国に記者と共に招かれた。滞在が終わって、ホテルをチェックアウトしようとしたら、国賓なので滞在費用の負担はないと言われ、中国政府に噛み付いた。ワシントンポストとして中国政府の都合の良い記事ばかりを書く気はない。ここで借りを作るようなことはできない。ちゃんとホテルのチェックアウトをさせないなら、出て行かないと主張してきちんと支払って、チェックアウトした。記事を読ませて頂く限り、ここまで襟を正した新聞が日本にあるとは思えない。
また別の視点で言わせて頂ければ、何年も自らの業界にいて、それなりの仕事をしていたら、自らが関与したことがらの記事に一度も遭遇したことのないサラリーマンも希だろう。遭遇したら、その記事の真偽の判断は当たり前のことで、記事が直接だけでなく、間接的に何を意味するか分かるはずだ。で、それから類推して直接は関与していない業界に関する記事であってもその信憑性がどれほどのものか想像はつくだろう。
そうじゃなかったら、さみしいが、しょうがない。もし、そうだとしたら、なぜ、あそこまで、あの経済紙に依拠するのか?広告宣伝主やら業界の顔色見ながら、しばし株価操作のお手盛りになりかねないのではという批判すらうけかねないほどのいい話しか掲載しえないのは、その存在からして自明の理じゃないのか?
なぜ、お手盛り記事に毛の生えた程度の内容しかない新聞を読み続けるのか?私は分かってませんよって公言しているようにしか見えないが、