軍事化を押さえる不買運動(改1)

武器輸出反対ネットワーク(NAJAT)の杉原さんのお話を聞いていたら、活動の一環として軍需産業に対する不買運動の呼びかけがあった。該当企業の事業所前や東京証券取引所前の抗議デモもあるし、市井の人たちから企業に武器輸出の反対のメールを送ったりと、反対運動もいくつもの手段を組み合わせている。そのなかで最も効果的で、最も企業が嫌うのは巷の人たちの不買運動だろう。

事業所前でデモされれば、企業としての体面に関わるし、うっとうしいという気持ちもあるだろうが、事業そのものになんの影響があるとも思えない。ところが不買運動となると話が違う。企業の業績に何らかの影響がでる。
ところが、軍需産業の多くがインフラなど公共施設に関係した事業を主体としていて、不買運動で圧力をと思っても、対象となる商品がろくにない。あっても全事業における比重が軍需ビジネスよりはるかに小さい。
さまざまな市民運動のなかで最も強力な手段である不買運動は軍需産業に対して使えないということなのか?

日本の軍需産業の雄、三菱重工の製品やサービスで、市井の人たちが直接買う製品として何があるのか?改めて考えても、家庭用エアコンの「ビーバーエアコン」ぐらいしか思い浮かばない。ホームページを見て、三菱重工の製品一覧から不買運動の対象とし得る製品やサービスを探しても、これといったものが見当たらない。

ところがちょっと視点を移せば、三菱重工が三菱系の企業であることから、一般大衆の不買運動に対して非常に脆弱な企業と無縁ではないとこが分かる。ビーバーエアコンなど一度買えば十年やそこいら買い替えないが、コンビニのローソンは巷のフツーの人たちの日常生活に直結している。

防衛産業の株主に圧力をかけようと東京証券取引所へのデモが許されるのであれば、株主を経由したグループ企業への圧力も許されるのではないか?もし、許されるのであれば、三菱重工の遠縁にあたるローソンを不買運動の標的にできないか?軍需ビジネスとはおよそ関係のないローソンだが、同じ系列の三菱重工が進めている日本の軍事化をやめさせるために、申し訳ないという論法は成り立たないのか?「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の故事にならえば、三菱重工が坊主で、ローソンにはすまないが袈裟になってもらう。

朝に昼に立ち寄るコンビニをローソンから十メートル先のセブンイレブンでもファミマにでも、ちょっと歩いて、ローソンを避ければいい。この不買運動で三菱重工はなんの影響も受けない。受けないかわりに、対策も立てようがない。社員や関係者にローソンで買い物をしてくれと頼むぐらいが精々だろう。ローソンも自分が軍需産業に関与している訳でもないから、対策の立てようがない。
三菱重工にもローソンにも、この不買運動に対する受け手がない。受け手がないということは一方的に攻め込まれるということに他ならない。

ローソンにしてみれば、ましてやフランチャイズのオーナーの立場では、自分たちがしていることで不買運動の対象にされるのならまだしも、もともとは縁もゆかりもない三菱重工の軍需ビジネスのせいで自分たちに矛先を向けられる。たまったもんじゃないというのが正直なところだろう。

不買運動の影響を大きく受けるとともに、受け手を持っているのは、ローソンの親会社(もうすぐ)である三菱商事になるだろうが、はたしてどのような受け手があるのか、営業妨害で訴訟を起こすことぐらいしか思いつかない。ところが、訴訟するにも、風評被害のようになってしまったら、相手を特定しえない。三菱商事や三菱銀行が三菱重工のビジネスにもローソンのビジネスにも一切関与していないはずはないが、それにしても三菱商事の一存で、何か有効な対策が打てるとも思えない。

総合商社としてローソンを買収してリテールに事業展開をはかったはいいが、グループ全体からみれば、不買運動の格好の標的を抱え込んだ形になってしまった。日本の軍需ビジネスの雄が一般大衆の反対運動に最も脆弱な組織になった。余計なお節介だが、防衛産業はいいけれど、グループで見たときの三菱系の防衛はどうなっているのだろう。

「死の商人の仲間がやってるコンビニで買うのはイヤだ」と人びとに思われたら、「ローソンのオニギリをかじったらシリアの人の血の臭いがしそうで」などというブラックジョークでも飛び出したら、もう、これといった防衛策があるとも思えない。
ちなみに三菱電機は日本の防衛産業の第三位につけているから、ローソンを標的とすれば、一位と三位をまとめて攻められる。

[川崎重工]
防衛産業の二位は川崎重工だが、どうもここは伊藤忠商事経由でファミマに行き着きそうに見える。
2016/9/25