TikTokとK-Popについて

トランプ陣営がオクラホマ州タルサで開催した選挙集会で奇妙なことが起きた。これについては、先に「百万人以上のはずがたったの六千人」と題して報告したが、BBCの報道を真に受けて、TikTokについて調べなかったことをお詫びしなければならないことが分かってきた。若い人たちを中心にした新しい流れに気づかずに報告しまいました。軽率だったこと反省しています。申し訳ございません。
六月二十二日付けのBBCの報道は次の通り。
「トランプ陣営、Kポップ・ファンによる『偽予約』否定 支持者集会の空席めぐり」でトランプ陣営が二一日にこの陰謀説を否定していると伝えている。
https://www.bbc.com/japanese/53133052

七月一〇日付けのNew York Timesの記事をみて、慌ててTikTokを調べ始めた。
「Amazon Backtracks From Demand That Employees Delete TikTok」
https://www.nytimes.com/2020/07/10/technology/tiktok-amazon-security-risk.html

記事の概略は下記の通り。
TikTokがアメリアのセキュリティ上の脅威になっていると言われている。
ByteDance社の後ろには中国政府が控えていて、TikTokを使うことで個人情報が中国政府に吸い上げられている。
TikTokは、どのような処理をしているのかを部外者が調べられないようにブロックしてある。
投稿サイトの動画データの標準化を視野に入れているのではないか。
に続いて、Facebookは競合するアプリケーションReelsを開発している。

アメリカが先端IT技術における独占的な地位を保たんがために騒いでいるHuawei外しと似ている。
セキュリティ上の脅威をアメリカが言えば、天に向かって唾を吐くようなことになる。アメリカそのものが世界のセキュリティ上の脅威であることは自明のことで、他国の政府や企業に対してセキュリティ上の脅威を言える立場なのか。
アメリカがインターネットを経由したデータや情報の流出(不法入手)をセキュリティ上の問題として、繰り返し中国政府と企業を非難しているが、具体的にどのような方法でどのようなデータや情報が流失したのかを明示したことがない。明示すれば、アメリカが機密漏洩プロセスを「詳細に追跡し解析する能力」を持っていること、そしてそれを活用していることを証明することになる。自分たちがしていることを、他の国がすることは許せないという主張にしか聞こえない。

TikTokについてニュースを漁ってみたら、今まで目を通したことがないどころか、そんなニュースサイトがあることも知らなかったのがでてきた。
十八年八月二日付けの「ケータイWatch」によると、
https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/1136313.html

「2月、Bytedance社が『TikTok』と『musical.ly』の統合を発表。半年経て新アプリが登場した。中国発で、日本では中高生に高い人気を誇るというTikTokは新アプリになった……」

TikTokについては、驚くことに十代(いっても二十代前半)の若い女性向けのファッション誌「Teen Vogue」にいかにも黎明期を象徴する記事があった。二〇一六年三月二七日付けだから、もう四年以上も前になる。
「Why Everyone Is Downloading This New Social Media App」
https://www.teenvogue.com/story/musically-becomes-top-app-popular-teens

TikTokのキーとなる機能musical.lyを「what exactly is musical.ly?」、これ絶対おススメという感じで紹介している。

TikTokは中国のByteDance社がアメリカのMusical.ly社を買収して開発された動画投稿サイトで、すでに世界で二十億回、アメリカで一億七千万回、インドでは六億一千万回ダウンロードされている。若い人たちを中心に個人動画の投稿サイトとして次の時代のプラットフォームを予想させるものになっている。
アメリカでも利用者は圧倒的に若い人たちで、K-Popのファンと重なるところがあるが、K-Popファンは増えているとはいえ、大勢には程遠い。

入手したニュースのコピーをメールに添付してハーレムに住んでいる友人にTikTokとK-Popについて聞いてみた。アメリカは多種多様で、これがアメリカというひとつのアメリカがあるわけではない。出身や社会層など個人の置かれた立場でみた知り合いのアメリカでしかないが、彼の視線からみた景色を知りたかった。ブロンクスで生まれて母子家庭で育ったアフリカ系アメリカ人で、今でもブロンクスに住んでいる。貧しかったことが幸いして奨学金をもらえた。おかげで私立の中学からMITまで行けたと自嘲気味に話していたのを覚えている。卒業後長きにわたって画像処理のアルゴリズム屋としてメシを喰ってきた人で、数いる白人の知り合いからは得られない貴重な社会認識を伝てくれる。

「K-PopはHip-Hopの要素も取り入れて、一部の人たちにはそれなりの人気、あるいはものすごい人気があるのかもしれないけど、普通のアメリカ人は『too feminine』としか感じられないだろう」
「TikTokは、俺たちみたいな中年以上のアメリカ人では聞いたこともないという人も多いんじゃないかな」

社会意識の高い若い人たちが出て行ってしまったことによって、Facebookがそれなりの社会層のそれなりの年齢の人たちのサロンのようになっていくなかで、Twitterはアメリカ社会の変化に一所懸命付いていこうと自己改革をはじめた。そんな悠長な動きを横目に、動画まで含めてあれこれ編集できる使い易いTikTokが若い人たちに焦点をあててでてきた。
既存のSocial Media App―FacebookとTwitterに Foxニュースを駆使してきたトランプの選挙参謀の慢心もあったのだろう。新しいSocial Media App−TikTokをプラットフォームにした若い人たちの社会変革に向けた大きなうねりが起きていること気がつかなかった。これがタルサの選挙集会の空予約百万人を招いた。BBCに訊かれても、その場でTikTokやK-Popにしてやられたとは言えなかったのだろう。

p.s.
Facebookで自分を晒すのもイヤだし、Twitterは忙しくて……。時代にとりのこされて、遅まきながらにも、しょうがないTwitterかNoteでもやろうかなと思っていたら、時代はもっと先にいっていた。
2020/7/14