欧米にタイでも大麻合法化(改版)

四月初旬に出席したセミナーで、小金井司法クラブ発行の『水脈』という小冊子を頂戴した。一面に丸井英弘さんの「平和な社会建設に貢献できる生き方をめざす」と題した論文が掲載されていた。そこで「私の人生と大麻取締法違反事件を振り返る」という小題をかかげて、「私の実感としては、憲法上人権を守るべき司法当局が普通の市民生活を送っている善良な市民を何らの被害が無いのに逮捕するという逮捕権の濫用を繰り返して来たと言えると思います」といっている。
丸井さんが管理しているサイト「麻と人類文化」にマリワナの歴史的文化的背景からマリワナの作用や法規制などが詳しく書かれている。マスコミの犯罪報道を見聞きするたびに何を騒いでいるのか思ってきただけに、記事を読んで、オレがおかしいわけじゃないと救われた気がした。
「麻と人類文化」、urlからご一読いただければと思う。
http://www.asahi-net.or.jp/~is2h-mri/

高専出て二十歳で工作機械メーカに就職したが、左翼思想で煩いからと三年目には輸出業務専門の子会社に、そして六年目にはニューヨーク支社(孫会社)に放り出された。技術研究所から輸出子会社へ左遷されて工場で働いたことがなかったから、機械に触る機会がほとんどなかった。最低限の技術的な経験も知識もなければ、英語もYesとNoに毛の生えた程度しかわからないのに、ある日突然駐在辞令を頂戴した。荷物を整理して一週間で赴任した。西も東もわからないアメリカで、毎週機械の据え付けや修理に西はミネソタやネブラスカまで出張することになった。顧客にも先輩駐在員にも迷惑のかけっぱなしだった。先輩駐在員からあついご指導を頂戴したが、しばし「バカなにやってる」という調子で苗字も読んでもらえないでいた。

七十年代の後半の話で、今のようにインターネットがあるわけでもない。国際電話なんか高すぎてかけようかと思ったこともない。筆不精もあって日本の家族や知り合いとは音信普通。さしたる金もないし英語もあてにならない。映画じゃあるまいし、そんなところに親身になってつきあってくれる人なんか現れるわけがない。仕事の必要でもなければ、バカと見下された付き合いなんかしたくもない。会社の代紋で人を値踏みする日本人社会からも距離をおいた。京都出身のヤクザとつるんで夜のマンハッタンで遊び惚けた。普通の視点でみれば荒れた生活にみえただろう。そんななかでマリワナがくれるちょっとした高揚感に救われていた。甲状腺機能亢進症で手術をしなければならなくなって、慌てて帰国するまでの三年間マリワナを常習していた。

拙い個人の経験からでしかないが、マリワナではマスコミが伝えているような幻覚は得られない。もしあったら、よっぽど特殊体質の人だろう。覚醒効果はあるっちゃあるが、ちょっと陽気になる程度のことでしかない。ジョイント(細身の短い手巻きタバコ状のもの)を三分の一も吸えばハイになれる。今でも多分コーヒー一杯のコストで酒より安い。人にもよるだろうが、タバコのように何本も続けて吸えるものじゃない。四六時中吸っていれば中毒の可能性もあるだろうが、中毒ということではアルコールの方が遥かにひどいだろう。

ジョイントと言われても、何それ?という人も多いかもしれない。
Googleで「ジョイント マリワナ」とで入力して検索すれば、写真付きでマリワナとジョイントの説明がでてくる。
https://www.google.com/search?q=%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%88+%E3%83%9E%E3%83%AA%E3%83%AF%E3%83%8A&rlz=1C1QABZ_jaJP876JP876&oq=%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%88%E3%80%80%E3%83%9E%E3%83%AA%E3%83%AF%E3%83%8A&aqs=chrome..69i57.8368j0j7&sourceid=chrome&ie=UTF-8

想像でしかないが、海外旅行が身近になった今、報道関係の人たちのなかにはどこかでマリワナを経験している人もいるだろう。冒険心旺盛なのが一人や二人とも思えない。その人たち、ご自身の経験と報道されている内容の違いにかなりの違和感、もっとはっきり言えば、報道されていることが事実ではないことを知らないわけじゃないだろう。

ドリームニュースに一般社団法人日本臨床カンナビノイド学会が二〇二〇年十二月二十九日付でリリースした記事がある。内容からしてプロパガンダだとは思えない。冒頭を書き写しておく。
「2020年に新たに大麻の規制緩和をした国と地域について。イスラエルから国連麻薬委員会まで」
https://www.dreamnews.jp/press/0000228936/

「大麻及び関連物質のWHO(世界保健機構)勧告を受けて今年12月に国連麻薬委員会において53カ国の投票があり、1961年以来初めて、大麻及び大麻樹脂がスケジュール(附表)IVからの削除が決定しました。このような国際的な議論が進む中で、新たに大麻の規制緩和をした国と地域があります。日本臨床カンナビノイド学会(新垣実理事長)は、2020年に大麻に規制緩和をした国と地域の調査結果を2020年12月29日の本プレスリリースにて発表しました」
「調査結果の概要は、医療用大麻の合法化は10地域、嗜好用大麻の合法化は5地域、産業用大麻は、3地域がありました。国際的な薬物政策では、1961年麻薬単一条約の附表IV(最も乱用され、医療価値なし)のカテゴリーから大麻及び大麻樹脂が削除され、正式に大麻植物の医療的価値が認められました」

ここで医療用価値と言われているのは、あまりに雑過ぎるとお叱りを受けるのを覚悟でいってしまえば、精神的ストレスを緩和するーリラックスしてもらうために使用すること、と想像している。
ヨーロッパでもアメリカでも合法化が進んでいる。報道で幻覚がどうのこうのというけれど、日本人はヨーロッパやアメリカに住んでいる人たちと体質が違うからとでもいうのか。副作用のない薬はないし、塩にしたって砂糖にしても過剰摂取すれば健康を損ねる。ましてや習慣性がはっきりしている酒やタバコは合法なのに、なぜマリワナは厳しく取り締まらなければならないのか。

そこでというのも変だが、海外旅行にいくのなら、合法化されている国にも寄ってきたらということなのか、どこにいけばという案内サイトまである。下記はその一つ。
【マリファナ】海外旅行で大麻は吸える?合法国や入手方法を解説!
https://taima-navi.com/taima/marijuana-oversea-trip/

四月の中頃にこんなことを書いていたら、五月十二日付けでCNN日本語版が驚くニュースを伝えてきた。
「タイ政府、大麻草100万本を全土の世帯に無料配布」
https://www.cnn.co.jp/world/35187376.html

「タイ政府は家庭での大麻栽培を認める新ルールの制定を記念して、6月に大麻草100万本を全土の世帯に無料で配布する。保健相がフェイスブックへの投稿で明らかにした」
「タイのアヌティン・チャーンビラクル保健相は8日の投稿で、大麻草を自家栽培の作物のように育ててもらいたいと表明した」
「6月9日に施行される新ルールに基づき、大麻草は地元自治体に届け出を済ませれば自宅で栽培できるようになる。ただし栽培できるのは医療用の大麻に限られ、免許がなければ商業目的で大麻を使用することはできない」
「タイは大麻を換金作物として普及させる計画を推進しており、2018年には東南アジアの国として初めて、医療用大麻を合法化した」

吸引することによって、直接的にどのような害があって、間接的にはどのような被害が起きる可能性があるのかをデータをきちんと揃えて、こうこうこういう理由で違法として取り締まらなければならないという説明が欲しい。どこかの中学や高校でもあるまいし、益と不利益についてなんの合理的な説明もなく、だた校則だからというような規制は社会としての欠陥にほかならない。法律だから規則だからと従うことを人々に求めるのは民主主義を標榜する社会がすることじゃない。
禁酒法じゃないけれど、違法として取り締まることによって、裏社会の資金源を提供するようなことをいつまで続けるのか。
2022/6/3