自己愛? 自虐ネタ? 芸術?(改版)

五月十八日付けで、APがFlying Dogビールのラベルの裁判について伝えてきた。Webで探してラベルを見たが、それは悪趣味の見本のようものだった。下品というのか卑猥さにびっくりしが、どこか笑い飛ばすウィットのようなものがあった。
「Judge: Regulators wrong to ban beer label that had naked man」
https://apnews.com/article/oddities-government-and-politics-lawsuits-9547ab96b26496f01502244242e6f14e

重なるときは重なるもので、今度は五月二十二日付けでThe New Yorkerが見たいと思う人がいるのかというものを伝えてきた。

四十年以上成熟した製造業で禄を食んできたからか、どうしても機能と性能、そして経済合理性の呪縛から自由になれない。芸術が即美を意味しないことぐらいわかっているつもりでいる。自分の美意識が世間一般の美意識におよばない、あるいはズレているだろうぐらいの自覚もある。ただこれも芸術と言われてもというものに遭遇すると、意識のズレが気になる。ズレがどこからきているのか、いくら考えてもわからない。わかるぐらいだったら、時々の必要に応じて、違う判断基準を引っ張り出すぐらいの器用さは持ち合わせている。

芸術なんかみせられたところで評価なんてできやしないが、自分の感じたことをなんの痛みもなしに、それはおかしいとして簡単に捨てられるもんじゃない。慌てて結論を出すものもでもないだろうし、まあそういうものもありじゃないかと宙ぶらりんのままにしておく。とりあえずの結論をと思っても、肯定的にも否定的にもいくら限定をつけたところで、宙ぶらりん以外にやりようはないんだし、そうとでもしなければ、ずっと頭の隅にわだかまりのようなものが残ってうっとうしくてしょうがない。

ところが、いくら放っておこうと思っても、素通りしにくい性質の悪いものもある。どうにも呑み込めない。もう申し訳ございません、教養不足でついていけませんと退散を決め込んだが、ありがたくないひっかりが外れない。

The New Yorker The Daily Sunday, May 22, 2022がIiu Susirajaの自画像写真集『Self-Portraits Are More Than a Dare』を紹介している。
https://www.newyorker.com/culture/photo-booth/iiu-susirajas-self-portraits-are-more-than-a-dare#:~:text=The%20photographer%20uses%20her%20own,either%20masochism%20or%20self%2Dlove.&text=The%20Finnish%20artist%20Iiu%20Susiraja,%2Dportraits%20than%20still%2Dlifes.

More than a Dareをなんと訳せばいいのか分からない。安っぽい勇気なんてんじゃない、どんなもんだという自信を裏付けとした写真集で、世間一般の目にはそこまでやるかといったところだろうと想像している。マゾヒズムなのか自己愛なのか、素の気持ちでご自身の躰をそのまま被写体として使っている。
大枚払って写真集を買う気にはなれないが、どんな写真なのか、多分見ない方がいいんだろうけどと思いながらも、見てみたい。そこでGoogleでIiu Susirajaと入力したら、下記が出て来た。
https://www.iiususiraja.com/
左上のPortfolio-Photosをクリックしたら、流石にこれはというのができた。
https://www.iiususiraja.com/photos/

既成の価値観や文化に対する反逆の類には親近感すらある。でもそれをそのまま出したものに惹かれるほど若くはない。見る人が見なければ気がつかない諧謔や風刺に粋なつっぱりでもなければ、ただの開けっ広げに毛の生えたものでしかないじゃないかって思うのは年のせいばかりじゃないと思う。
ただ参ったなと言っているわけにもいかないし、さりとて今さら取っ組み合いをする気にもなれない。どうしたものか。なんにしても知っておいたほうがいいとは思うが、なかには知らなかった方がよかったということもある。

こんなことを言うと叱られそうだが、宗教の人や右翼?の人たちの話を聞くと、自分のなかでなんとも辻褄の合わせようがなくて、聞かなかったほうがよかったと思おうのに似ている。昔聞いた労組の委員長の話もそうだったし、政治屋の話にも似たようなことがいえる。まさか前衛芸術と共通するものがあるとも思えないのだが。
2022/5/28