子育て応援―葬祭や仏壇まで(改版)

都から「子育て応援とうきょうパスポート」をもらった。予算の関係なのかプラスチックじゃなくて紙製だった。普通のプリンター用紙よりはちょっと上質だが洗濯機で洗ったらくしゃくしゃになる。Suicaやクレジットカードと似たようなサイズなのに、どういう訳か七ミリ横長で二ミリ高い。乳幼児向けのイラストが印刷されていている。

すでに都や区からは毎月子育て支援金なるもの頂戴して、ミルク代やおむつ……にと有難く使わせいただいている。そこに応援パスポート、貧乏人根性が恥ずかしいが、このうえどんなサポートを得られるのか気になった。
パスポート、どこでどうやって使うのかと裏をみたら、「お子様のお名前」と「お子様の生年月日もしくは出産予定日」を記入する欄があった。その右側に「注意事項」が三つ並んでいる。一つ目は、表をきちんと記入しろと、そして二つ目は「登録証」の提示を求められたら場合は、当カードをご提示くださいと書いてある。なんの説明もなく唐突に登録証。登録証とはなんなのかと考えたが、当カードを提示とあるから登録証をといわれたら、パスポートをだせばいいのだろうと想像している。それにしてもこんな短い、なんということもない文章ぐらいちゃん書けないのかとひと言言いたくなる。それとも登録証なるものが別にあるのか?あるのだとしたら、どうやってそれを入手するのか?その説明はどこにあるのか?
祖父の立場としては三つ目が引っかかる。「当カードを提示する際には、健康保険証や、母子手帳などの提示を求められる場合があります」
誰の健康保険証と規定はしてないが、母子手帳とあることから、このパスポートは利用者を母親に限定しているように見える。提示を求められることもあるということだから、祖父母が孫に何かを買ってあげようというときに使えなくはないだろうが、どうも使いにくい。いつもユニクロじゃと、たまにはブランドもののベビー服を、天然木のおもちゃでもと思っていたときだったこともあって、このパスポートが気になった。

そこで、いつものようにGoogleに「子育て応援とうきょうパスポート」と入力したら、東京都福祉保健局の「子育て応援とうきょうパスポート事業」が出てきた。説明は下記の通り。
「子育て応援とうきょうパスポート事業」は、東京都が、子育てを応援しようとする社会的機運の醸成を目的として推進している事業であり、企業・店舗等が、子育て世帯や妊娠中の方がいる世帯に対して、様々なサービスを提供する仕組みです。

ページを辿って行ったら、下記が見つかった。
子育て応援とうきょうパスポート事業協賛店一覧(令和4年7月1日時点)(Excel:2,562KB)
Excelに並んでいる協賛店にびっくりした。ファーストフードチェーン店やファミレスチェーン店、大手スーパーに学習塾もある。携帯ショップも衣料品も眼鏡屋もあればクリーニング店も居酒屋も保険屋も接骨院に家電量販店……こんなにと驚きながらスクロールしていったら斎場相談や仏壇屋まででてきた。おいおい、歳だってのは分かってるが、子どもができたら、親の葬式の心配にまで、何から何まで手回しのいいことでと呆れると同時に、どんなサービスにせよ提供するにはそれなりのコストがかかってんだろうにと楽屋裏が気になってしょうがない。
Excelファイルをと思う方は、下記サイトに入って、「協賛店について」の下にある「子育て応援とうきょうパスポート事業協賛店一覧(令和4年7月1日時点)(Excel:2,562KB)」をクリックしてください。
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/kosodate/passport/passport01.html

ホームページに戻って、スクロールしていったら、「パスポートの利用対象者」が明記されていた。
都内在住の18歳未満のお子様がいる、又は妊娠中の方がいる世帯
※18歳に達した後、最初の3月31日を迎えるまでを対象とします
同居していても世帯が違うから、孫を思う祖父母は対象外だった。

さらにスクロールしていったら、提供されるサポートが表示されていた。斎場案内や仏壇店までと協賛店が多岐にわたっているから、まあトイレにおむつ交換台があるとか、粉ミルクのお湯をくれるとかぐらいじゃないかと想像はしていたが。
ホームページにあったサポートリストは下記の通り。
(1)粉ミルクのお湯の提供
(2)おむつ替えスペース
(3)トイレにベビーキープ設置
(4)授乳スペースの提供
(5)キッズスペースの提供
(6)ベビーカーを店内で利用可能
(7)景品の提供
(8)ポイントの付与
(9)商品の割引
(10)その他、利用者に資するサービス

行政の支援に加えて民間企業の協力、ありがたいことです。でもパスポート事業も私たち国民の税金をつかってのことですよね。その税金のうちいくらかは、事業携わったお役人やその外郭団体の方々のお給料になる。なかには電通じゃないけれど行政と民間の間に入ってなんてのもと考えていくと、なんとか支援があれこれ盛んになればなるほど、福祉が充実すればするほど、その関係者のと、ちょっと複雑な気持ちになってしまう。

レイオフの危険を抱えて切った張ったの世界で生きてきたものには、善意や慈善の看板掲げて禄を食んでいける人たちが、なんとなく羨ましく思えてしまう。内実を知らない故に、隣の芝生は青く見えてしょうがないということでしかないと思いはするが。
営利企業でもあるまいし、行政に対投資効果を求めるは間違っていると思うが、誰も無限のリソースをもっているわけじゃない。どこかに予算を振り向ければ、どこかを削らなければならない。
「子育て応援とうきょうパスポート事業」ねぇ、と思えてならない。
2022/7/13