成功報酬型インターンシップ

5月初旬に文学部4回生の大学生からメールが届いた。(関西では4年生を4回生と呼ぶらしい)。“今回私が提案させていただくのは「成功報酬型インターンシップ」です。”から始まって、“成功報酬型インターンシップとはこれから社会的に必要とされている商品を販売している企業さんに提案(今回の場合は販売代行)を持って往き、結果がでればこれに応じて報酬を貰うというものです。”と、成功報酬型インターンシップがなんなのかを説明してくださっている。さらに、“このインターンを通して、仮説をたてて実行し検証するといったいわゆるPDCAを学生自らが経験することで、会社もしくは社会に価値を提供でき、自発的に物事を考える若者を増やすのが狙いです。”と、実しやかにインターンシップの社会的貢献についての解説までされている。最後に御社を…で知り、大変興味を持ちましたとあった。実にありがたい?お話しである。
以前、営業代行業者?何社から電話を頂戴したことがある。営業代行であって、伝統的な商社でも代理店でもない。営業代行業者にお願いして市場開拓ができるのであれば、こっちもこんなに苦労はしていない、そんなに簡単じゃないんだよと思いながら、会社の代紋もあり、無碍にお断りするのも問題になりかねないので、お話はお聞きするようにしていた。曰く、御社のホームページを見た、有望客を今直ぐにでも紹介できる、成功報酬型なので初期費用はかからない。。。断る理由のない、至れり尽くせりの提案だと言いたいのだろう。電話を切りたいので、こっちが扱っている製品がなんなのか?、どのような用途に使われるのか?ご存知か、もしご存知であれば、例をあげて頂けないか?と切り替えしてやっと電話を切れた。
頂戴したメールには、販売代行業者の個人版とでもいうのか、新手の就職活動の一つなのか分からないが、最も基本的な、大事な点がいくつか欠落している。
第一に、相手にとって自分がどのような価値があるかの、相手にどのような貢献をし得る能力があると考えているのかという対社会の自覚がない。大学生であれば、何を目指して何を勉強してきたのか、勉強してきたことを生かして、御社にどのような貢献が出来ると考えているのか、どのような社会経験と社会認識を持っているのか?このくらいの前口上も言えずに大学を卒業してくるのか?教える側、社会の側の問題の方が大きいのは分かっているが、残念ながら最後は個人の問題に帰結し、フツーの就職すらできないことになる。今回拝受したメールには文学部とある。しからば、文学部で学んできたことが、こっちの事業活動や推進にどのように活用できると考えているのか?たとえこじつけまがいでもいいが、考えたことがあるのかすら疑わしい。たとえ稚拙であっても考えてきたのであれば、メールの文章にその痕跡らしきものが見えるはずだ。
第二に、営業の仕事を理解していないというより、おそらく社会認識の不足からだろうが、あまりに軽視している。営業は、営業活動を通して企業の代表として、顔として客と接する。数十年前から、物を作れるから売れるのではなく、売れるから作れる時代になったことすら知らないのか?簡単に販売代行しますという文言の背景を考えると、本来、営業が、社会人としての人としてのありかたから、客に提供する製品やサービスに対する理解、代理店やエンジニアリングパートナーとの協力作業、ご同業との位置関係、仕入れから納期管理、支払い条件など商取引の基本など広範に渡る知識が要求される職業だということを知らなすぎる、あるいは知り得る経験をしたことがないか、おそらく多くはこっちだろうと想像するが、知る能力がないとしか思えない。一人前の営業マンを育て上げるのに企業がどれほどのコストと時間をかけているのか想像できないのだろう。
カタログか資料を持って、ほぼ決まった客を巡回するルートセールスがあっている業界もあるが、まさかこれをインターンシップで学びたいと言っているわけではないだろうと好意的に想像させて頂いている。
第三に、こっちは成功報酬型で只働きに近いケースもあるので受け入れる企業側にほとんど負担がないとでも思っているふしがある。情けない話だが、多分、アルバイトかボランティアで経験する仕事と似たようなものか、その自然延長線に仕事を、職業をイメージしているのではないかと想像している。会社の顔として客に出す営業となると、受け入れ企業側は、コンピュータシステムへのアクセス権やPCの貸し与えから始まって基本的な従業員としてのトレーニング、営業トレーニングや製品トレーニング、技術セミナーなどをインターンに提供しなければならない。これなしでは、アルバイトとしてはいいがインターンにならない。さらに、トレーナーの工数も馬鹿にならないし、お気楽にインターンさん、いらっしゃいという気にはなれない。インターンを受け入れて販売代行として頂いて、ありっこないとは思うが、何らかのプラスがあるかもしれない。それでも、受け入れるコストを考えれば収支はマイナスにしかならないだろう。それでも受け入れるとなれば、それなりの意義くらいは求めたくなるのも人情だろう。大上段に構えた能書きは期待しないから、受け入れ側が求めたくなるささやかな意義くらい説明してもらえないだろうか?