派遣のくせに、正社員ヅラして

経営を任されたところで派遣社員の方が発注業務をしていた。発注業務はコンピュータシステム上での作業で裁量の余地がほとんど残されていない。決められたことを決められたようにしなければシステムが受付けない。経験から、コンピュータシステムのどこにどの程度の抜けがあるのか、その抜けの大きさから、どこでその抜けを使っても問題にならないかまで知っていた。
彼女の頭痛のタネは融通のきかないコンピュータシステムにではなく、昔ながらのどんぶり勘定の営業が引き起こす支離滅裂な無理難題をどう整理して、コンピュータシステムに通すかということと、派遣社員を見下した正社員どもの横柄な言動とどう付き合い、自分のなかでどう折り合いをつけるかにあった。
営業マンが客と代理店、その横にくっついているパートナー?と居酒屋営業をしてくる。注文内容もはっきりしなければ、先に処理した注文内容との重複やキャンセルと、代理店とその下の代理店の在庫との関係、前回の受注価格と今回の受注価格の違い、今回の受注価格とコンピュータシステムを通して承認された価格との違い。。。もうごちゃごちゃし過ぎて、営業マンご本人も何がどうなっているのかわからなくなっている。社外の関係者が少なくとも二社あるが、それを営業担当が掌握しきっていない。このごちゃごちゃのまま、何の事前処理もせずに、受注として派遣社員に発注業務の指示を出したから、いつものように一騒ぎが起きた。
作業しようにも、新しい受注をコンピュータシステム上で処理する前に、現状の三社に渡る(社内ではないことになっている)在庫と今回受注したとしている製品の重複を調べなければならないし、在庫品の短くなってしまった保証期間を通常の保証期間として客に提供するための社内処理。。。いつものことだが、筋の通らないというか処理しようのない指示がくれば、実務担当者としてのプライドと派遣社員としての鬱憤を晴らさんばかりの、実に論理的な“できない”と“まず、これをはっきりしろ”という押し返しが営業マンに戻ってくる。
寝技や禁じ手を屁とも思わない昔ながらの営業で、実に営業営業した、それしかない営業が派遣社員からのクレームに派遣の分際で何を言ってる。苦労してやっととってきた注文を処理できないはないだろう。言われた通り機械的に処理すりゃいいだけだろうが。いったい何年それやってるんだと、腹をたてる。英語がろくに分からないから、本来営業が事前にコンピュータシステム上できちんと処理しておかなければならないことをしていない。受注してしまってから後追いの、辻褄合わせだから余計手間がかかる。これも英語の問題で人任せになるから、発注業務作業の前にかなりの準備作業が必要になる。
超優良企業と評され世界にその知られたコングロマリットだったが、内実は中小企業を買収して一つの看板をつけただけだった。当然社員には買収された企業からきた人達が多いから、国際ビジネスの環境で英語で仕事とはならない。そこにもってきて、コンピュータシステムが人泣かせで、米国ですらまともに使える営業マンがいなかった。財務の視点しかない経営管理層が自分たちに分かり易いかたちでオペレーション情報を取りたいという目的で導入したシステムのため、営業にしてもオペレーションにしてもリペアリターンにしても実務部隊には使いに難いというより使えないシステムだった。このシステムは絶対にやっちゃいけないという典型的な実例の一つだろう。実務をろくに知らないエリート候補が上の要求をさっさとまとめて外注に放り投げたシステムで、いくらトレーニングしても、使用を評価対象として考慮すると言っても誰もまともに営業ステータスを入力しなかった。あまりに操作が煩雑過ぎて、日々に営業業務で忙しい営業マンにはできなかった。
営業マンと派遣社員、メールでやりとりしたところで、何も前に進まない。数回もメールが行き来すれば発火点に達する。発注業務の担当者では処理のしようのない注文書、そこには前回、前々回の営業のミスを相殺するごまかしすら滑り込ませてあったりするから質が悪い。
メールのやりとりが始まったら放っておけない。放っておけば、口頭での詰り合いになるのに大して時間はかからない。発注業務をできるようにするためには、何をしなければならないかと確認した上で、怒る営業をなだめて、こっちで前処理を始めようとする。ここで、しばしば営業の抵抗に合う。派遣社員が生意気だ。。。どうだのと言って前処理に協力しようとしない。その理由は、注文に紛れ込ましたごまかしが発覚するからにあるのだが、頑として認めない。
認めようが認めまいが、頂戴した注文、処理しなければ問題はもっと大きくなる。なんでこんな後始末を社長自らしなきゃならないんだと思いながらも、ごちゃごちゃの解きほぐし、関係者の関係を最低限機能するように保つ、。。。あれもこれも一筋縄じゃゆかない。自分を殺して、明日のために一つでも二つで実際に汚れ仕事をしてみせる。相手あっての作業になるので、気を使うが、作業としてはあきらめないでごちゃごちゃを解きほぐして、コンピュータシステムに突っ込めるかたちにするだけなのだが、誰もしようとしない。
こんなやあんなで、毎日のように営業マンと発注業務の派遣社員の間で一悶着起きる。起きれば必ず営業マンから派遣のくせに、文句ばかり言って仕事をしない、社長のお前が何とかしろと文句を言ってくる。言ってくるのはいいのだが、どちらに理があるのかははっきりしている。文句を言ってくる営業マンの能力が低すぎる。能力の低い人達、それも群れをなしたとき、必ずと言っていいほど起きる現象がある。自分、自分たちより立場の弱い人、人達に自分、自分達の至らない点の後始末を押し付けた挙句に、xxxの分際で。。。という、口に出すか出さないかは別にして、自分(達)の正当性、相手の非正当性を当然のありようとして主張する。
xxxの分際でという言葉には言う側の不当がある。
正社員と派遣社員の二重構造が嫌で、上司に具申して派遣社員の方に正社員になって頂けないかと何度かお願いしたが、何度お願いしても、きっぱりと断られた。個人の事情もあるのだろうが、その言葉から、あの人間として失格の正社員と同じになるなどあり得ない。失礼なことを言うなという響きがあった。その響き、ありがたく頂戴した。今でも大事にしている。
2013/8/25