発電−手前味噌品評会

(自称)専門家やそれを後ろ盾にした広告宣伝まで含めプロパガンダが氾濫している。まっとうなものが多いはずだが、素人のフツーの知識で考れば、喧伝されている効果とそれを得るのにかかるコストを考えると二の足を踏むものが多い。多くのケースではっきりした効果が実証されていると主張しながら、効果のほどは体質によってことなりますという小さな文字で逃げ口まで用意しているものまである。怪しげな物やサービスの売り込みだけでなく、ちょっと背景を想像すれば大衆操作を目的としているとしか思えないプロパガンダもどきも後を絶たない。今になってみれば、かつて喧伝された原発の経済合理性も安全性もていのいいプロパガンダだったような気がしてならない。
年配者向けの健康に関するさまざまな商品の宣伝と似たようなものと考えては失礼だが、もし、発電・給電システムの優位性を競う公開討論会でも開けたら、少なくとも催し物としては面白いもの、意味のあるものになるだろう。プロパガンダと言うと失礼になるかもしれないが、そこには手前味噌の氾濫と応酬を期待できる。巷の人たちの発電・給電方法に関する知識の向上もはかれる。いいことばかりに思えるのだが、困る組織や人も多いだろう。
討論会はスマートグリッドなどと銘打った展示会に付帯したパネルセッションではない。企業や業界、お役所がそれぞれの利益や権益を目的としたものでは意味がない。参加者の資格制限を極力押さえ、大企業だけでなく巷の発明家から零細企業、ベンチャーまでができるだけ対等の立場で参加できるようにして、それぞれの手前味噌の講釈(説明)から質疑応答までインターネットで公開する。
発電の原理や給電システムの実用性、経済合理性、将来への展望から発電施設の周囲への環境負荷、送電網システムや売電システムまで発電から送電、電力消費のあり方の可能性を広く紹介しあえば、検証プロジェクトへのパートナー作りも可能も開けてくる。
実用化に向けた試験稼働まで含めると、発電方法の大分類だけでも結構な数になる。発電方法の大分類に加えて電力を使用する側の視点で再分類して可能性のある組み合わせを考えると大分類の数倍の数になるだろう。大分類は、ざっと“水力”、 “火力”、“原子力”、“風力”、“太陽光“、”地熱“、”バイオマス“あたりだろうが、人によっては近い将来の可能性として”水素発電“なども候補として挙げるかもしれない。
全てが現在の原発や水力発電、火力発電のような巨大な発電設備でなければならないとも思えない。水力発電所といえば巨大なダムを思い浮かべるが世界には途上国の部落の電力を賄う程度の小さな水力発電設備もある。大きければ大きいほど提供できる企業も限られた数の大企業になる。大企業とその利権に群がっている魑魅魍魎にしてみれば大きなシステムにしておきたいだろう。
でも大きいことが一概にいいことでもないはずで、東京などの大都市への給電に適した発電方法と過疎地や離島などに適した発電方法は違うだろう。その土地々々、町々で何を重要視すべきかも違うはずで、住んでいる人たちや事業者がコストを考慮しながらも環境負荷を抑えた発電・給電方式の組み合わせもあるだろう。
他の発電方法との比較を自社内でできる大手もいれば、一つの方法しかもたない単一ソリューション提供者もいる。誹謗、中傷は禁止だが自社の優位性を訴求するために他社の方法との比較は奨励される。目的はどの方法がどのような場合には優位性があり、どのような課題があるのか、また他の方法との組み合わせで課題をどのように解決し得るのか模索することにある。
情報を開示しお互いに手前味噌の主張をして頂くことで、市井の人たちはあっちの手前味噌とこっちの手前味噌の試食―シミュレーションができる。素人では突っ込みきれない領域のことであっても、市井の人に支持を得んがための参加企業同士の突っ込みあいに立ち会えば、どっちが自分たちにあったソリューションの可能性が高いかの判断もできる。いくつもの発電方法を提供している大手は、自社のそれぞれの発電方法の優位性と課題を−需要に合わせるかたちで提供してきているという主張をするだろう。一方ではこれがいいと言い、他方ではこれではなく、あれがいいと。これもあれもどちらもいいが、では…の場合はどっちだという具体的な質問に対してどこまで即答できるか。政財官の三位一体体制で既得権益に浸かってきただけの体質でこのようなオープンな場に耐えられるか。「毒をもって毒を制す」という諺があるが、手前味噌で手前味噌の正体を見るってのもありじゃないかと。
原発は危険すぎる。万が一の場合の保証をし得る人も組織もない。一市井の人がフツーの頭でフツーに考えれば脱原発しかない。しかし、そのフツーの結論では困る、既得権益にまみれた組織と人たちもいる。今回の災害を教訓に代替え案まで用意しえる市民社会に進化してゆければと思う。
2014/1/23